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HOMEバックナンバーvol.5日本一頑固な映像表現者“越智敏郎”という人物
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MTV ASIAと巡り合いが更なる領域への扉を開けた

 越智氏が、加速度的に映像表現の魅力に取り憑かれていく中、彼に更なるチャンスをもたらす出会いがむこうから近づいてきた。それが世界的な音楽チャンネルである「MTV」ネットワークの「MTV ASIA」だ。
そのキッカケは、たまたま彼が在籍していた「SPACE SHOWER TV」に、「MTV ASIA」の番組制作の協力依頼が舞い込んできたことに始まる。
 この番組は日本の音楽やファッションなどを紹介する「Music Update Tokyo」という番組で、週一の30分番組だったが、越智氏は「SPACE SHOWER TV」のスタッフとして、香港と日本を行き来しながらこの番組制作にかかわることになった。

 「Music Update Tokyo」の番組の仕事を重ねていくうちに、彼が手がけた番組映像は「MTV ASIA」のクリエイティブディレクターたちに絶賛されることになり、彼の映像に対する思いは、ますます加熱していくことになる。
「もっと高いスキルをつけたい」当時の彼の中にあった思いは唯一そんな欲求だったという。
 やがて彼は、より高いところを求めて、かつて彼が心ひかれたUKミュージックシーンの膝元でもある「MTV Europe」に挑みたいという思いを強めていき、ある日その思いを、彼を高く評価してくれていた「MTV ASIA」のプロデューサーにぶつけた。
 「MTV Europeに行きたい!」そんな彼の思いに、プロデューサーの口から出た言葉は「まずは、香港(MTV ASIA)にこないか? ここで1年くらい勉強してみてからヨーロッパに行ってもいいじゃないか」というものであったという。
後になってみれば、「SPACE SHOWER TV」からのヘッドハンティングめいた物議もかもし出してしまうことにもなってしまったようだが、越智氏がその場で香港行きを決意したのは言うまでもないことだ。


 「MTV ASIA」での待遇はずば抜けていた。社員としての契約であり、給料条件もよく、いきなり「プロデューサー」としての待遇で迎えられた。越智氏の表現に対する強い思い入れの強さが世界への扉を少し押し開いた瞬間であった。
彼はその時の契約書を今もなお大切にしている。

 新しく始まったワークスタイルは、何もかもが日本の映像業界の体質とは違っていたという。
越智氏によると、日本の映像業界では、“ディレクター”という立ち位置に対する認知や、そのクリエイティブ性の評価といったものがきちんとなされていない傾向が多いという。

 「どちらかというと、日本はディレクターが報われない環境であるように思います。作品をつくってもクレジットなんてされないことがほとんどです。だから、才能があるのに埋もれてしまっている人がすごくいると思います。
ひとつは、日本独特の“徒弟制”の悪さだと思うんです。
徒弟制には、現場で指示系統がはっきりするなど、いいところもあるのですが、ディレクターやスタッフが頑張っていい仕事をしても、それは当たり前で、そのクレジットは上に立つプロデューサーや、プロジェクトを仕切るプロダクションがとってしまい、結局スタッフは単なるパーツのような扱いをうけてしまうことが多いんです。
だからなかなかいい人材が育たないです」
と、越智氏は語る。

 香港(MTV ASIA)にも、イニシアチブワークという意味での徒弟制めいたものはあったようだ。しかし、ものづくりに対するアプローチは実にダイレクトで、そこにかかわるスタッフ一人一人のアイデンティティがきちんと評価され、例えわずか10秒のアニメーションタイトルであっても、その制作にかかわったスタッフがきちんとクレジットされるようなカルチャーがあったという。
「何しろ世界中から“バイブル”と呼ばれるような精鋭が集まった環境ですからね」(越智氏)。
そんな中で、越智氏は、初めて出会うさまざまなワークスタイルに都度驚き、大きなカルチャーショックと感化を受けていくことになる。



チャンネル・ブランディングとの出合い

 そんな中、一夜にして「MTV ASIA」が「Channel[V]」に変わってしまう事件が起きた。
放送権を所有していたオーストラリアのメディア王“ルパード・マードック”が「MTV」と放映権料でもめて、「MTV ASIA」は一夜にしてライセンスを失ってしまったのだ。
現場のスタッフたちにはたまらない事件で、この瞬間から「MTV ASIA」で使っていた「ステーションID」や「ジングル」といったものが一切使えなくなってしまった。収録済みの取材に使われていた「マイクキューブ」のロゴも、全部モザイクをかけて、「MTV」の「M」の字が一切見えなくしなければならなかったという。

 そんな混乱の激震地で、越智氏は「チャンネルブランディング」というものをぶっつけ本番で体験していくことになった。
メニューページ、チューニング、ジェネリック、マンスリー…。初めて飛び交う専門用語でチンプンカンプンの毎日で、何をどうしたらよいのかもわからない手探りの状態だったが、召喚されてやってきたブランディングディレクターやクリエイティブディレクターの仕事を間近にし、ひとつのチャンネルが、真っ白な状態から新たなブランドイメージを立ち上げていくという貴重なシーンに特等席でかかわれたことは、その後の彼の仕事に大きな影響力をもって広がっていくことになる。


 「MTV ASIA」から「Channel[V]」という大きな組織変革を体験したものの、彼の香港での活動は、毎日がワクワクとした出会いや体験に満ちあふれた刺激的なものであったようだ。
この地で、解き放たれた彼の活動は、日を追うごとに、どんどんアグレッシブに膨れ上がっていき、いつのまにか、彼の立ち位置は、「Channel[V]」の社員としてではなく、3人の仲間たちとともに起業した現地法人「engine corporation」としての活動へとシフトしていき、シンガポールのステーションの「ステーションID」を手がけるなど、更に貪欲にその活動範囲を広げていっていた。一方、さまざまなシーンで数々の栄誉ある賞も手中に収めていき、もはや彼の勢いを止めるものはなかった。

 やがて、彼は、次にやりたいことの形として、日本への帰国を選ぶことになる。
「この街で3年ほどやっていく中で、最初に描いていた“MTV Europeに行きたい”という目標にはこだわらなくなっていました。それは既にここで出会った多くのトップクリエイターたちとの仕事の中で受けた刺激や数多くの体験で満たされていったからです。
 それと、映画にも挑戦してみたいという思いがあり、暇を見ては青春コメディー映画の脚本を書いていたのですが、それもある程度書き上がっていたので、日本に帰って本編を撮ろうという思いがありました。
仕事して賞なんかもらったりすると、もう水を得た魚と同じで、どんどんとつくれるじゃないですか? でも、そんなものもあまり続くと、なんかちょっとおなかがいっぱいになった感じがあり、もう映像作家はいいかな?...と思いました」
と越智氏は語る。



チャンネルブランディングの経験が活かされたプロジェクト

 越智氏が日本に帰ってきた頃は、BSやCSといった多チャンネル化時代が幕を開け、「SKY PerfecTV!」をはじめとした開局ラッシュを迎えていた。
そんな中、先にも触れていたように、彼は「ソニー・ピクチャーズエンタテインメント」が運営するCS番組のチャンネル「ANIMAX:アニマックス」のブランディングを手がけることになる。「SKY PerfecTV!」の中でも不動の人気を誇るアニメチャンネルだ。
 このプロジェクトには、「SPACE SHOWER TV」から4人、「Channel[V]」から4人、そして越智氏の合計9名のチームでスタートすることになったが、その人選に越智氏が大きく関与していたようだ。つまりは、映画を撮りたいという思いで帰国した彼であったが、同時に、このプロジェクトが決まっていたことも彼の帰国の要因であったことになる。

 当時、日本の放送業界では、チャンネルブランディングというものに対する意識は実に低く、海外チャンネルの表面的なルックスの部分だけをまね、ジングル的なキャッチを入れれば、それだけでチャンネルブランディングだという観点も実に多かったという。トータルイメージの構築は疎か、チャンネル全体の戦略というものをきちんと踏まえたアプローチはほとんど見られなかった。
 「重要なのは、視聴者のターゲット層や、試聴形態、編成といったものにきちんと照準を合わせて、視聴者を獲得するというストラテジーなのですが、そんなものを展開するノウハウを持った人など、ほとんどいませんでした。どちらかといえば、海外からクリエイティブディレクターを呼んで、開局時だけ手伝ってもらい、出来合わせで展開するといったチャンネルが多かったようですね」(越智氏)。
 あの日、香港の「Channel[V]」で、ぶっつけ本番のチャンネルブランディングを経験し、それを機に、様々な経験と勉強を重ねながら積み重ねてきたブランディングのノウハウは、こうやって、自分自身の手でひとつのチャンネルイメージを描き出す大きな力として彼の中で開花した。

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