YOMIURI ONLINE
現在位置は
です

教育ルネサンス

一覧
本文です
PTA再考

(12) 「作らない」も選択肢

写真の拡大
地区委員会の活動として、集団下校に付き添う保護者(西東京市で)

 PTAのない学校もある。

 3学期も終わりに近づいた3月17日、おしゃべりをしながら集団下校する子供たちが車道を横切ろうとすると、後ろから車が曲がってきた。「危ないからちょっと待って」と声をかけたのは地元小学校の保護者たちだ。

 東京都西東京市立けやき小学校では年3回、通学路の安全点検も兼ねた集団下校を実施、保護者の組織「地区委員会」のメンバーが付き添う。学区内21地区から各2人以上の委員を選出。毎朝の集団登校でも集合場所で待機する当番をこなす。だが、PTAとは無関係。学級や学年でのレクリエーションを企画する「学級委員会」も各クラスから3人選ばれるが、これもPTAではない。

 二つの小学校が統合してできた、けやき小には、2001年の開校以来、PTAがない。開校直後、保護者の話し合いは数回持たれたが、結論は出なかった。学校は、PTAがなくても、子供の安全を守る組織は必要と考えて地区委員会を作り、保護者の要望で学級委員会もできた。

 3月までけやき小校長だった児玉健二さん(60)は、統合前の小学校の教頭時代、嫌々役員を引き受ける保護者を見ており、PTA設置を強く働きかけなかった。その後も、保護者から設置の要望が強く出ることはない。

 保護者の支援が必要な時は担任が学級便りなどで呼びかける。月1回の全授業公開で保護者同士の交流もある。「PTAがなくても学校運営に支障はない。保護者に何度も足を運ばせる手間をかけなくてよかった」と児玉さん。

 開校30年目の神戸市立西落合小学校は昨春、PTAを作った。数年前から保護者会はあった。学級委員長会、保健体育委員会など四つの委員会のトップが話し合う場もあったが、会長はおらず、4人の委員長が集まっても、誰がリーダーシップを取ればよいかわからないことがあった。学校側も、保護者会に連絡をしたい時などに不便さを感じていたため、山口健次校長(58)が後押しして保護者会をPTAに改組。役員を決め、市PTA協議会にも加盟した。

 副会長の加藤智代さん(41)は、PTAになってから、保護者と学校の関係が密になったと感じている。

 昨年、1年2組の母親が加藤さんを訪ね、「2組の先生が隣の1組で研究授業をやっている。2組でやらないのは成績が悪いせいなの?」と質問した。加藤さんと母親は校長を訪ね、校長から「2組では授業が済んだ単元だったから」という説明を聞いた。それで母親は安心した。学校にとっても、疑問が不信感に変わる前に問題を解決できた。

 「誰に聞けばよいのかわからなかった素朴な疑問も気軽に聞いてもらえる。PTAを発足させてよかった」と会長の橋口洋子さん(43)。

 PTAがない学校は全国的に少なくない。PTAに何を求めるのか。組織の根本が問われている。(山田睦子、写真も)

 都道府県組織加入率は93% 日本PTA全国協議会によると、昨年5月1日現在、全国3万2098の公立小中学校のうち、都道府県のPTA協議会に加入しているのは2万9904団体(93.2%)。2200校近くは、都道府県の協議会に未加入か、PTAがないことになる。東京都の加入率が特に低く、1958校中、加入しているのは608校(31.1%)。

2008年4月2日  読売新聞)
現在位置は
です