2006年08月13日 更新

【ヒューマン】NYで自分の「色」見つけた…BONNIE PINK

BONNIE PINK

飾らない人柄が魅力のBONNIE PINK。「音楽だけでなく、いろいろなことに挑戦したい」とチャレンジ精神旺盛だ=東京・恵比寿西

最新シングル「A Perfect Sky」のヒットで大ブレークしたシンガー・ソングライター、BONNIE PINK(33)。勢いを駆って7月26日に発売した初ベストアルバム「Every Single Day」は自己最高のオリコンアルバムチャート初登場2位を記録。今最もノッているアーティストの一人だ。デビュー11年目でのブレークに、「音楽を続けていてよかった」。そう喜びをかみ締める彼女の原動力は、2年間のニューヨーク生活にあった。

(ペン・白石大地 カメラ・鈴木健児)

落ち着いた話し方に時々飛び出すおっとりとした京都弁。ショートカットを真っ赤に染めてデビューし、洋楽テイストの楽曲を世に送り出し続けるイケイケのイメージからは想像できない素朴な笑顔が印象的だ。

「地味な生活してますよ。みなさんが抱いているようなミュージシャンの派手さなんてないです。バーゲンにも行くしね(笑)」

そんな庶民的な彼女を一気にブレークさせたのが、「A Perfect Sky」。同曲はエビちゃんこと蛯原友里(26)が大胆にビキニのひもをはずす資生堂「ANESSA」のCMソングに起用され、オリコンシングルチャート初登場5位という自己最高位を記録した。「私の最近の曲は、ポップな作りのものが多いけど、そのポップ感とリスナーとの感覚がこの曲で結びついたような気がする」と分析したが、ヒットの要因はそれだけではない。

5月27日に公開された「嫌われ松子の一生」(中島哲也監督)では、ナント風俗嬢役で女優デビュー。「風俗嬢役の人が化粧品のCM曲を歌うことで、『何なんだ、この人は?』って興味を持ってもらえたのかな」。活動の幅を広げたことがヒットにつながったようだ。

平成7年にデビュー。その後、スウェーデンの有名音楽プロデューサー、トーレ・ヨハンソンとのコラボで話題を集めたが、同10年にニューヨークへ渡り活動休止に入った。

「ただ休みたかった。それまでずっと仕事で自分の時間も持てなく正直疲れていた。リリースのタイミングが早く、次の作品を作れって言われても、私の体の中には何もない状態。音楽のことが嫌いになりかけていた」

休止期間は3カ月の予定だったが、ブロードウェー鑑賞などに夢中になり、結局2年にもおよんだ。もともと、英語が大好きで、中学時代から洋画を字幕なしで見たり、洋楽に自分なりの訳詞をつけたりと、語学力はバッチリ。NY生活でその語学力にさらに磨きがかかって、今では自身の曲に登場する英語詞を見事な発音で歌っている。

NY生活で手に入れたものがもうひとつある。「主張する」ことだ。

「ニューヨーカーは主張が激しく、そういう人たちに励まされたような気がする。私も必要なことは自分から言っていかないといけない気持ちになれた」

2年間の“充電期間”を終え、再びわき上がってきた音楽への情熱。彼女の帰りを待っていてくれるファンもたくさんいた。「仕事とプライベートのバランスをとって、やるからにはいい作品を発表していこう」。本来の自分を取り戻し、新たな一歩を踏み出した。

昨年、デビュー10周年。そして、新曲ヒットの勢いに乗って先月発売したベストアルバムは8月7日付けオリコンアルバムチャート初登場2位と自己最高位の記録をあっさり更新。14日付でも2位をキープし、50万枚を突破するヒットとなっている。

「音楽が好きだからというのもあるけど、あのとき休めたから、今まで続けてこられたんだと思う。ベストアルバムも続けていたからさまになるものに仕上がったし、続けていてよかった」

“継続は力なり”という言葉がまさにぴったり。今後については、「着の身着のままの性格だから、すごい頻度でリリースするかもしれないし、また休むかもしれない。でも、いいものを作りたい気持ちは変わらない」と力強く語った。

名実ともにトップアーティストの仲間入りを果たした彼女の気ままな旅は続いていく。

■BONNIE PINK(ボニー・ピンク)

本名・非公表。昭和48年4月16日、京都府生まれ。大阪教育大学在学中の平成7年9月にアルバム「Blue Jam」でデビュー。その後、アルバム「Heaven’s Kitchen」「evil and flowers」にトーレ・ヨハンソンがプロデュース参加して話題に。10年に渡米し、2年間活動を休止。デビュー10周年を迎えた昨年、初のフルカバーアルバム「REMINISCENCE」を発売。今年5月27日公開の映画「嫌われ松子の一生」で女優デビューを果たした。血液型A。

★「パワフルな」全国ツアー

30日から全国ツアー「Under The Perfect Sky」がスタート。京都・MUSEを皮切りに9月28日の東京厚生年金会館まで10都市12公演を行う。ツアーに向けて、「パワフルなステージにしたい」と意気込んでいる。