4月11日、衆議院第二議員会館で、「共謀罪の新設に反対する市民と表現者の院内集会」が開かれました。前に積み上げられていたのは、河野洋平衆議院議長と扇千景参議院議長にあてた、10万2千142人分の「
共謀罪の新設に反対する請願署名」。
今年の1月末から日本消費者連盟など「共謀罪の新設に反対する市民団体共同声明」の呼びかけ団体が中心に集めたもので、当日までに整理が間に合わなかったものの、これ以外にすでに約2万人分の署名が集まっている、と説明がありました。
この院内集会での発言の一部を紹介します。
松岡徹さん(参議院議員・民主党)
「入国外国人に指紋採取と顔写真の撮影を義務づける入管法改正(出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案)など、公共の秩序という甘言をもって提案されるこうした悪法が通ってしまえば、戦前の治安体制のような社会に戻ってしまうのではないかと、と危惧しています。共謀罪はその最たる法律。社民党や共産党のみなさんとともに、廃案に向けて闘っていきたいです。同時に、与党のなかからも団体の定義をしっかりしなければならないとか、少なくとも犯罪の準備行為を行ったことを条件に入れるべきだという疑問が上がっていますので、そういう声もどんどん広めて廃案に追い込みたいと思います」
仁比聡平さん(参議院議員・日本共産党)
「3月に与党から民主党に対し修正案が提案され、民主党のみなさんが応じないなかで、共謀罪からの審議入りがかなわずに入管法改正案、代用監獄の法定化(刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律の一部改正案)の審議に進んだ、というのが衆議院の法務委員会の状況です。参議院の法務委員会では、衆議院の法務委員会で審議中の弾圧・治安立法の色濃い法律ではない、参議院先議の法案をいくつか先に審議し、衆議院から送られてくる入管法改正案の趣旨説明を終えたところで、5月の連休に入るだろうというのが、今のところの見通しです。代用監獄法案や万万万が一の共謀罪法案の審議があるとしたら、連休明け以降ということになります。参議院の法務委員会で、私がこれらの法案に質疑をしなければならないという事態に絶対に立ち入らせないように、衆議院の段階できっぱり廃案に追い込んでいく闘いをみなさんと一緒に大きく広げていきたいと思います」
福島瑞穂さん(参議院議員・社民党党首)
「今国会、共謀罪関連法案の審議から入らなかったのは、共謀罪反対運動が燎原の火のように広がる可能性があることを法務省が怖れたからではないかと思います。共謀罪反対の声をもっと大きく上げていきましょう」
保坂展人さん(衆議院議員・社民党)
「共謀罪反対の声は次第に広がっているのですが、盗聴法制定当時と比べると、共謀罪のことはまだまだ知られていません。目配せしただけでも共謀が成立するとか、悪いことを考えていなくても犯罪行為をしようと決意していなくても、たまたまその場に居合わせただけで共謀の一味として逮捕されることもあり得る、という認識が広がれば相当議論をよぶに違いありません。5月の連休後、衆議院に教育基本法、国民投票法案、共謀罪関連法案など、質の悪い法案が揃って出てくる可能性が高いです。フランスでは、CPE(初回雇用契約。26未満の若者を2年間の試用期間中に企業が理由なく解雇できる制度)に反対する300万人のデモがこれを撤回させ、勝利しましたが、共謀罪ではまだ3000人のデモもありません。少なくとも3万人くらいの声を街頭で上げる必要があります。今、ほんのわずか生まれた時間のゆとりを活かすことが勝利への展望を切り開くと思います」
星川淳さん(グリーンピース・ジャパン事務局長)
「環境や国際協力など各論で活動しているNGO、NPOは、共謀罪反対での立ち上がりが遅かったため、いくつかの団体と、共謀罪は、我々が各論でやろうとしていることにも網をかけるものだと訴える
「共謀罪法案」に反対するNGO・NPO共同声明文(※)の呼びかけをしました。これまでに、かなりの数のNGO、NPOから連名の申し出が集まっていて、賛同・連名団体が、4月19日(水)午後1時から、衆議院第二議員会館第三会議室で共同記者会見と院内集会を開きます。私がグリンピース・ジャパンの事務局長として心配なのは、グリンピースが共謀罪がターゲットにしている国際団体であるということ。そして、グリンピースはご存じのようにただ議論をしたりロビー活動をしたり署名をするだけではなく、たまにはある問題に対して、非暴力ですが、ちょっと毒を塗った針をピッと刺すこともあり……それは鍼灸のツボに鍼を刺して相手を健康にするようなものですが、刺したときは痛くて嫌われることも多いので、こんな法案ができたらたちまちカンバンをたたまなければならないという危機感をもっています。後発ですが、みなさんと一緒に頑張って成果を出したいと思います」
小倉利丸さん(ネットワーク反監視プロジェクト)
「共謀罪と同じ法律案のなかで提案されているコンピュータ監視法案は、共謀罪を補完するもので、警察が捜査に必要だといえば、携帯電話会社などを含むプロバイダーに対し、電子メールや携帯メールの(送信元、送信先、通信日時その他の通信履歴といった通信の記録である)ログの保管を要請できるという内容が含まれています。法務省は、通信記録を消去させないようにするだけで、捜査機関に開示させるわけではない、だから、プライバシーの侵害にはあたらないというのですが、実は、大変な問題を含んでいます。通信記録の長期におよぶ保全はプロバイダーなどの通信事業者に多大な負担がかかります。盗聴法成立以前から警察は、令状もとらずに通信事業者からメールや電話の記録の提供を任意で求めるという、違法な盗聴を常識のように行っていました。それを踏まえると、負担のかかる通信記録の保全をたてに、通信事業者に任意でさまざまな情報を提供させる手段に使うのではないかと危惧しています。今でも警察は任意で通信記録を入手していますが、それが容易になればなるほど、ジャーナリスト、メディアのみなさんには死活問題である取材源の秘匿ができなくなると思われます。また、共謀罪により共謀それ自体が犯罪となれば、警察はますます秘密警察化し、人々の日常的な会話や行動を監視するのが警察の主要な仕事になるでしょう。法律が通れば当然、予算と人がつきます。今までのように内緒に予算をやりくりするのではなく、公然と国家の金と人を使って人々の生活を監視できるようにするのが共謀罪であり、コンピュータ監視法案だと思います」
この院内集会では、「表現者たちの会」の寺澤有さんも、「今朝、共謀罪MOVIE『共謀罪、その後』を公開しました」と案内。また、監督で韓国出身の
朴哲鉉(チョルヒョン)さんは、兵役についたときに今まで隠し撮りされた行動確認の写真を見せられた、という経験を踏まえて、「韓国でなくしていこうとしている国家保安法のような法律をなぜ日本でわざわざ作ろうとしているのか。共謀罪は通す前に絶対反対しないとだめ。通ってしまってからなくすのは難しい」と語りました。
衆議院法務委員に一言!