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[2006年 2月 8日]
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アホウドリ:東京・伊豆諸島の「デコちゃん」、好きな模型に9年間も求愛 /千葉

 ◇増殖作戦は成功…「今度こそ本物の恋を」−−山階鳥類研究所が確認

 伊豆諸島の鳥島(東京都)に生息する国の天然記念物・アホウドリの「デコちゃん」(雄・推定年齢13歳)=写真左=が、島営巣地内に設置されたプラスチック製の実物大模型の「デコイNo22」を本物の雌と思い込み、約9年間も求愛行為をしていたことが5日、山階鳥類研究所(我孫子市高野山)研究チーム主任の佐藤文男研究員(53)によって確認された。「No22」は5月に撤去される予定で、デコちゃんの熱愛は“実らぬ恋”として終結する。

 尖閣列島生まれの若鳥(当時4歳ぐらい)の雄が模型のアホウドリ「No22」に求愛ダンスを繰り返す姿が確認されたのは97年。11月に導入された世界初の人工衛星を使った「希少鳥類生態監視システム」の2台のカメラから送信される画像で分かった。佐藤さんらはこのアホウドリを「デコちゃん」と命名した。

 デコちゃんは毎年11月の産卵時期に帰島。必ず「No22」の元に現れては、愛の巣作りと求愛行為を行っていたことが送信画像と現地調査で確認された。雌の模型は他に92個あったが、デコちゃんが寄り添うのはいつも「No22」。別の雄アホウドリが「No22」に近付いて求愛ダンスした時、激しく威嚇する“悲姿”もあったという。

 91年、環境省委託事業としてアホウドリ増殖事業「デコイ作戦」が開始。絶滅危機にある鳥島のアホウドリを救うために人工的な新しい営巣地を初寝埼地区に作り、アホウドリの鳴き声を流すスピーカーと93個の模型デコイが設置された。

 佐藤さんは「模型に9年間も求愛した例は聞いたことがない。今度こそ、デコちゃんは本物のアホウドリに恋をしてほしい」と話している。【大矢武信】

毎日新聞 2006年2月6日

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