■ 新球場 知恵と資金出す ■
「地域担当」置き敷居低く
球界再編後の危機感に端を発し、カープ球団はファンと地域の声に耳を傾け始めた。その存在が近くて遠い印象を与えてきた過去を反省。球団改革に乗り出した松田元オーナー(53)は、年明け早々にも「地域担当」を設置し、ファンサービスもさらに進めるという。カープはどこまで変われるかを聞いた。
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「選手会とも協力してファンサービスはもっとやっていく」と話す松田オーナー
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―地域密着の姿勢が薄らいでいるのでは、と言われています。
地域から敷居が高いように見えた部分はあったと思う。今後は要請があれば協力し、その窓口として球団に地域担当を置く。地域のニーズを吸収した上で、球団に不足している横の連携を図りながら対応していきたい。
選手会と一体で
―選手会と球団が会合するなど、ファンサービスが充実しそうです。
選手会からの提案は早く具体化したい。今は選手とファンに距離があるとの指摘が一番きつい。選手は精いっぱいやってくれている。先日、広島市教委の「Doスポーツ」で小学校を訪ねた選手が子供たちと給食を食べたりしたが、告知が十分でなかった。選手会の思いもくんで球団と一体化できれば、もっといいものになる。広報も重要だ。
―球界再編をきっかけに球団経営に厳しい視線があります。展望は。
交流試合の始まる来年は自信はないが、対策は打つ。一億円かかっている(ドミニカ共和国の)カープアカデミーの経費を七千万円に抑えるなど、今の事業をやめるのではなく、経費圧縮で赤字を減らし、増収に挑む。巨人や阪神戦が減る減収分は、交流試合の観戦パックなどで取り戻す。今年も黒字になる。
財務公開を検討
―独立採算制で黒字を続ける苦心ぶりを財務公開して、示すことはできませんか。
昨年の収入六十五億円を大まかに言えば、放映権料二十八億円、入場料二十億円、販売・広告料十二億円…。支出は現場の人件費や補強、試合移動費に三十九億円、球場使用料や広告が十億円、一般管理費に十五億円。一九七五年からの黒字は野球の利益として大野屋内練習場や由宇球場などのハード面に投資してきた。新球場建設検討委での財務公開はやぶさかではない。
―新球場は必要です。建設負担はしますか。
新球場は建設場所よりも実現性が最大のポイント。しっかりとしたコンセプトで、広島の誇りとなるような球場にしなければならない。その細かな工夫ができる自負はある。稼働率を上げるアイデアもある。手法や金額に課題はあるが、負担は考えている。
育成本部で強化
―地域の「カープを支えたい」という思いに、どう応えますか。
カープは五十年以上前に地域で生まれ、育てられ、支えられてきた。新しい枠組みの球界で、今後も広島に健全な形で球団を残すのが私の最大の使命。そのためにも地域の理解を得て、野球やファンサービスに反映するよう努力したい。
―低迷が続くチームの強化策は。
球団改革も必要だが、本音では強化にもっと力を注ぎたい。特に育成面の再建を急ぎ、二、三軍を一括する育成本部を発足する。監督の采配(さいはい)の選択肢を広げるための強化だ。現場は山本監督が最も信頼できるから預けている。ファンからさまざまな声もあるが、監督には私が一番苦労をかけている。
(おわり)
2004.12.12
連載は木村雅俊、近藤結一、五反田康彦、山本修が担当しました。感想、ご意見をお寄せください。ファクス082(291)5852
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