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カローラ40年目

時代のハートつかみ続け

 日本のモータリゼーションの立役者となったトヨタ自動車の「カローラ」が、登場してから40年目に入った。日本と海外での累計生産台数が3000万台を突破し、世界でも有数のロングセラー車となった歴史を振り返り、売れ続ける秘密を探った。(西原和紀)

最も買い得

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(上)アイシン精機の技能者の手で、38年ぶりに復元された初代カローラ(中)ハイウエー時代に対応した2代目(下)省エネを進めた3代目

 初代のカローラが発売されたのは1966年(昭和41年)の11月。前後して日本の人口が1億人を突破し、いざなぎ景気が始まった。日本は高度経済成長のただ中にあった。

 ほぼ半年前にはライバルの日産自動車が「サニー」を発売し、マイカーは庶民の夢ではなくなりつつあった。カローラは「80点主義+α」の思想で開発され、実用性に少しだけ高級感を加えた。エンジン排気量もサニーより大きい1・1リットルとし、広告では「プラス100ccの余裕」を強調した。

 価格は43万2000円。当時の大卒サラリーマンの初任給は2万円程度で、一般家庭にも手が届かない価格ではなかった。カローラの人気はサニーを上回り、カー(自動車)、クーラー、カラーテレビの「3C」は一気に普及していく。カローラは今でも「性能や装備を踏まえると、最も買い得なクルマ」とされる。


柔軟に進化

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(上)「80年代の高級大衆車」とされた4代目(中)5代目で前輪駆動を採用(下)6代目(87年5月発売)

 「時代の変化に合わせる柔軟性」もカローラがロングセラーを続ける理由だ。

 70年5月登場の2代目は、前年の東名高速道路の全線開通を受けて排気量を100cc、全長を100ミリ、全幅を20ミリ大きくし、高速安定性を高めた。第1次石油ショックの翌年、74年4月に発売された3代目は、省エネや排ガス規制に心血が注がれた。派手な宣伝は自粛されたが、生産台数は歴代最多だった。

 79年3月に出た4代目で排気量は1.5リットル以上になり、83年5月発売の5代目は「世界の最先端を行くベストファミリーカー」として、FF(前輪駆動)をセダン系で初めて採用。人々が豊かになるにつれて性能は上がっていく。バブル期の前後に発売された6代目、7代目は内外装を高級化し、「最も豪華なカローラ」と言われた。

 95年5月発売の8代目は地球環境への配慮から、セダンで最大50キロ・グラム軽量化した。2000年に登場した現行の9代目はトヨタの奥田碩会長が「これがカローラか」と驚くほど、デザインなどを一新した。

 消費者の志向の多様化に対しては、古くは「レビン」、今でも「スパシオ」「フィールダー」といった派生モデルを臨機応変に出し続けている。


来秋10代目

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(上)7代目(91年6月発売)は高級化が進んだ(中)地球環境に配慮した8代目(下)9代目(現行)カローラ。「ゼロからの出発」を掲げて開発された

 69年以降、カローラが国内販売首位を譲ったのは、ホンダ「フィット」の後塵(こうじん)を拝した2002年だけ。満40歳を迎える来年秋には、満を持しての10代目が登場する。開発担当の奥平総一郎・エグゼクティブ・チーフエンジニアは「カローラは常に時代をリードしてきた。環境や安全面などでベストセラーカーにふさわしいクルマを出したい」と次のキーワードを語る。

 トヨタは、「クラウン」(王冠)「コロナ」(光冠)「カムリ」(冠)など、主力車種の名前に冠をつける。カローラ(花冠)は今後もトヨタの代表であり続けるだろう。


(2005年11月13日  読売新聞)