(2004 06 13)更新
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その2 「あります」 2004 06 13
「・・・であります」
と言うと人によっては軍隊言葉を思い出されるかもしれない。
が、あれはそもそも山口方言である。
明治維新で薩長が天下を取って長州の方言がああいう形で定着したという説を聞いたことがある。真偽のほどは定かではないが。
ただアクセントとかイントネーションが違う。
普通、他県のひとが「・・であります」と言うと割と平板に言うであろう。しかし実際は「あ」にアクセントがくるのである。
以前、井上ひさしの『国語元年』だったか、を某国営放送でテレビドラマ化した際、故・川谷拓三氏が長州出身者の役で、しきりと
「・・であります」「・・でありますよ」
と言っていたのだが、この言い方が平板で、長州出身者の私は不満であった。
わかりやすく言うと、英語で「アニマル」を「ア」を強くして「アーニモウ」と発音するような感じで「あーります」と言うと思っていただければいい。無論そこまでオーバーではないし、けして「あ」を伸ばすわけではないが、イメージはだいたいお分かりいただけると思う。
こういった抑揚のない山口弁は、アクセントやイントネーションのない英語といっしょで、それはもはや山口弁ではない。今風の平板言葉では話せないのである。
とか言いながらもう十年近く帰省してない私。
まだ故郷に山口弁は残っているのか(汗)???
その1 「ちゃ」 2004 06 13
先日知り合いのシナリオライターM先生と話していたら、ふとそれぞれのお国言葉の話題になった。
「そういえば山本さんは漫画家のT橋先生とお友達でしたよね」
「はい」
「そちらの方言で『・・・ちゃ』という言い方があるそうですが、『うる○やつら』のラ○ちゃんの『だっちゃ』言葉は何か関係があるんですか?」
え。
「うちは千葉なんですが、うちのほうだと『ちゃ』と言うと、人の名前につけて『○○ちゃ』というふうに使います」
ははあ。「さん」とか「くん」とか「ちゃん」のようなものか。
ちなみに私の田舎は山口県の防府市である。
で、私は答えて
「防府だと『・・・ちゃ』は呼びかけの時に使いますね。『山本ちゃ』と言うと『山本ってば』とか『山本よう』みたいな意味になって。
あと例えば誰かに私のことを指して『あれが山本ちゃ』と言う場合は『あいつが山本だよ』の『だよ』の部分に相当します」
亡くなった祖母などは、何か呆れたことがあったりすると「ちゃっ!」と単独で使っていたりもした。「なんとまあ」とか「まったくもう」とか言った意味である。
とは言ったものの、私は1977年に初めてT橋先生と会ってから(当時はどちらもまだアマチュアだった)一度も彼女の前で山口弁は使ったことがない。そもそも同郷人と話すとき以外は標準語である。
つまりT橋先生が私の山口弁を作中に取り入れるということは、ありえない話なのだ。
さて、では○ムちゃんの「ちゃ」はどこから来たのか。もしかしてT橋先生の故郷、新潟でもそういう方言があるのか。
むくむくと疑問がわいて、さっそく仕事中ではあったが本人に電話をかけた。
「あー、あれは私の故郷の言葉じゃないですよ」
T橋先生曰く。
要約すると、彼女が最初に「・・・ちゃ(あるいは「だっちゃ」?)」言葉を目にしたのは井上ひさしの小説だったとか。同じくT橋先生の作品に、ラ○ちゃん以前に「○っぴゃ半魚人」というキャラがあったが、ラ○ちゃんが「だっぴゃ」では可愛くないので「ぴゃ」ではなく「ちゃ」にしてみたとか。
もはや二十年以上前のことで詳細は確かではないが、だいたいそういう経緯だったらしい。
もしかすると佐渡の方では「ちゃ」と言うかもとのことであった。
「うる○」連載中は、色々な地方のファンから「うちの田舎でも『ちゃ』と言います」というファンレターをもらったそうである。