巨人清原満塁で三振、500号お預け
<阪神11−2巨人>◇21日◇東京ドーム
あぁ…。東京ドームがため息に包まれた。巨人清原和博内野手(37)が、本拠地での通算500本塁打達成を、事実上逃した。前夜、2発で王手をかけて臨んだ阪神戦。しかし7回2死満塁で無念の空振り三振を喫するなど無安打に終わり、チームも2−11で大敗した。今日22日からは名古屋、福岡、広島へ遠征。地元ファンに勝利とメモリアル弾を届ける夢は果たせず悔しさを募らせたが、師と慕う中日落合監督の目の前で決める。
心の底から、決めたかった。東京ドームのファンのために。球場を後にする清原は、半ば冗談めかして、つい“豪快”に言い放った。
清原「10−2で、2アウト満塁、(カウント)2−3でフォークやで。ちゃうやろ〜。(藤川は)ケツの穴、小さいわ。チ×ポコ付いてんのか〜。タフィ(ローズ)もあきれてたわ。まあ明日、頑張るわ」。
8点を追う7回2死満塁、フルカウント。最後は藤川のフォークに、バットが空を切った。しびれる場面で、直球勝負を疑っていなかった。肩透かしのフォークに、清原は苦笑いを浮かべ、バットを地面に投げた。抱いて寝るほど、バットを大事にする男が、珍しくバットに感情をぶつけた。
単に悔しいだけではない。何かが違った。「清原は清原ですから」と今キャンプで話したように、常に「清原」であり続けるはずが、いつもと違っていた。通算500号に王手をかけて臨んだ、伝統の巨人−阪神戦。東京ドームには今季最多の4万4703人が詰めかけた。ファンは、この日の本塁打を期待している。普段とは違う力が、清原にも、のしかかった。
試合前、清原はあらためて、勇気の源・東京ドームのファンの前での快挙達成を「夢」と話し、思いを込めていた。
清原「それは夢のまた夢です。自分でも楽しみにしています。100号、200号までは順調に来ましたが、自分の中では、入団発表の時に、王さんの868本を超えると言ったので、ようやく500まで来たな、という感じ」。
今日22日からは、8試合のロードが待っている。この阪神戦が、本拠地で決める事実上のラストチャンスだった。この日は亜希夫人と長男正吾くん、また、今年1月から走法を学んだ陸上短距離の第一人者・高野進氏(43=東海大助教授)も応援に駆けつけた。試合前にはバリカンで、頭を剃りあげて気合も十分。舞台は整っていたが、連夜のアーチはならなかった。
堀内監督も、試合前から普段と違った。「清原だけに、キヨった」と冗談を口にしていた。大敗で3度目の借金完済チャンスを逃した試合後も「気負ったって感じじゃないんだけども、スイングしたけど自分の思ったところに…。今日はちょっと的外れっていうか、自分のスイングのところにボールが来なかった。まあ、でもいつかは出ますよ。通過点なんだから」。淡々と話す中に、高揚したベンチの空気をにじませた。
今日から中日3連戦。相手ベンチには、かつてアドバイスを受けたことがあり、師匠と慕う落合監督が待ち受ける。巨人で500号本塁打をマークすれば、王、落合以来3人目。落合監督の持つ、歴代5位の510本塁打も、射程圏に入っている。落合監督の前での区切りの1発も、バットマン清原のドラマを感じさせる。この日、言い残したひと言で、気持ちの切り替えはできている。今日こそ、豪快に決めてみせる。【金子航】
[2005/4/22/08:43 紙面から]
写真=7回裏巨人2死満塁、空振り三振に倒れ悔しそうな表情で藤川(手前)を見つめる清原
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