高翼機対低翼機


どちらがよいのだろうか?我々は著名な航空力学専門家や、NASAさえも取材した。


高翼機対低翼機のどちらがどういう特性を持っているかについて、議論の無い事実として:

 a) 誰もがどちらがいいか議論するのが好き、b)誰もが自分としての意見を持っている、c)そして誰も自分の意見をなかなか曲げようとしない。

この話題が出るたびに、自分の主張をサポートする例を見つけ出している:「下降しようとしたら、突然下に別の機がいることを発見した。低翼機だったら衝突していただろう」。他方、「上昇している時に、突然真上に他機がいるのを発見した。高翼機だったら衝突していただろう」。


                 


どちらの派に属そうとも、一旦主張をもったら、どちらの意見であろうとも、それをサポートする例をたくさん見つけることができる。もちろん、我々は専門化でもないし、飛行機メーカでもない。いつでもこの点の議論をする時に、実は常識からして主張点を証明するような事実に基づいているわでもない。低翼機はガソリンをいれやすい。そのとおりに感ずるが、技術的事実であるわけでもない。それとも事実なのか。

我々は、この記事を準備始めた時に、一方的な意見を書き、読者が反論できないような方法をとるより、専門的知識を持った人にテーブルについてもらうこととした。実際、我々は3つの飛行機メーカに行き、何故今製造している機体を作っているのかを観察した。また、すぐに結論に結びつけることがないよう、NASAに行き公正なエンジニアの意見も聞いた。我々の期待は、飛行機を実際によく理解している人達に事実と論理的な根拠を学び、並び立てることによりこの論争を終焉させることであった。

パイパー航空機

古いパイパーから最近再生した新パイパー社は(セスナAg-ワゴンを除けば)低翼機と高翼機双方を製造している唯一の会社である。実際創立の30年代から50年代までは、単発機は高翼機ばかり製造していた。実際最初の低翼機を出したときも、自社では開発せず他社(スティンソン)から設計を購入した。この最初の低翼機はコマンシェで、58年のことだった。低翼機バージョンのセスナ152と言えるチェロキーはそれからその5年後だった。それ以来、この工場のドアから出てきた高翼機はスーパーカブだけである。

現在、パイパーのサラトガやセミノ-ルのような最新型機に乗っている人には、昔パイパー社が低翼機のリーディングカンパニーであったことを想像するのは難しいだろう。何故変化したのか。

ジョン・ベッカー、新パイパーのプロジェクト及びエンジニアリング担当副社長、は我々になぜパイパーが 低翼機が何故ベストの選択であると考えているかを語ってくれた。設計上の歳優先課題は、その利用目的に合わせるとうことであり、この場合トレーニングと個人ユースのクロスカントリー飛行であり、実際パイパー機はこの双方の目的で使用されている。

トレーナー / 一般的なクロスカントリーユースで、ベッカーは 顧客調査を実施した時に、低翼機が審美的に好まれるという傾向を掴んだ。顧客からの意見では、低翼機が「正しい」ように見えるということである。大局的見地からは、売れるものを作るという決断の前には、他の考察は色あせて見える。このように、顧客の好みを反映させて製造するというのは賢いビジネスディシジョンである。もしマーケットが理由が何であれプロダクトが好きではないなら、それらの嫌悪はプロダクトが成功であるために注目されなくてはならない。 それで、もしパイパーがターゲットとするマーケットセグメントが低翼機を欲することが明確であるなら、会社がそれらを生産することは論理的な帰結である。

ベッカーが 他に低翼機有利の根拠を示したのは、低翼機は燃料チェックがしやすいし、燃料補給も梯子不要でやりやすいということである。これもマーケティング的な考慮である。

視界ももう一つの重要な根拠である。低翼機は旋回中に周囲の状況を見渡しやすい。これは特に事故の大半が発生するトラヒックパターンで他機を認めやすい利点に繋がる。

ベッカーはさらに、航空力学の設計上、低翼機は車輪の設計が容易であると付け加えた。着陸装置などのために強化された部分が翼であり、それがパイロットをより下にあるというのは、安全上も利点である。

ベッカーは、低翼機は胴体と機体との角度の点で、妨害空気抵抗が発生するということは認めたが、「克服するのはそれほど困難ではない」と締めくくった。


ビーチクラフト社

ビーチクラフト社のインテグレーション部長、サム・ブルナーはシンプルに答えた。「翼は着陸装置をつけるのに最も適した場所だから単にその翼を胴体の下に配置した」

ビーチクラフトが 歴史的に高翼機に最も近いものを設計したのは、レジェンダリー・スタッガーウィングであるが、これは双翼機なので高翼機に数えることはできない。

「最初から翼が最も着陸装置をつけるのに論理的に適した場所であると考えていたし、これは現実解として最適だ。D-18双発機にいたっても、どうようの発想でエンジンと着陸装置を翼にとりつけた。」

「ボナンザは、以降のビーチクラフトのデザインの出発点になっているが、それはシンプルで直線的な発想だ」と彼は付け加えた。「低翼機は着陸装置を格納するのに便利である。胴体へ格納しようとすると、狭いためにデザイン的に苦労が多い」。

では力学的にはどうか。「どちらでも大差ない。ドラッグは低翼機でも高翼機でもあるし、ストラットで支えた高翼機に比べカンチレバーの低翼機はドラッグが少なく、重量さによって相殺される。低翼機は安定化のために上反角が必要だが、そのためドラッグを減らすための工夫もしやすい。しかしそれらはビジネスをやる上での一部の仔細なことだ」。

 

高翼機対低翼機
テキスト
高翼機

低翼機

横方向安定性
(効果的な 上反角)
幾何学的に本質的に安定性があり上反角不要 幾何学的に上反角を必要とする
ウイング / 胴体接続部の妨害障害 僅かに少ない 90度以下で交差するために接続部にエアーフローを滑らかにする工夫が必要
スラストライン 重心をスラストライン上に置くことが簡単 重心がスラストラインの下になり、エンジンストップの時ピッチアップの傾向となる
グランド高か 少ない 着陸寸前でクッション状態となる
クロスウインド着陸での許容範囲 翼が高いため、翼端が十分に地上から離れている 僅かなロールで地上へ翼端が接触するため、上反角が必要
クロスウインドでの操作性 横風で風が翼の下に入りこむため、翼が一層傾こうとする傾向がある 一般的には良好
ブッシュフライング(荒地での離着陸) フラップやエルロンが十分に保護される;一般的に地上の障害物から翼が保護される 地上の障害物で翼が損傷しやすい
フロート(水上)やスキーの装着 状況を見やすい 一般的に3点着陸装置である必要があり、フロートなどはより後部へ装着
視界 乗客受けする(下界が見やすい) パイロットにとって見やすい(旋回時ブラインドになりにくい)
燃料システム 燃料ポンプが不要の場合もある 補給しやすい
着陸装置構造 キャビンのエリアに乗客用スペースと妥協しながら格納する必要あり 支柱が短くて済む
着陸装置左右間隔 一般的に狭すぎる 広くとれるために、地上での操作性がいい
着陸装置格納寄稿 複雑 翼の中に格納することができる
外見 伝統的 いっそう近代的
パッセンジャーの感覚 実際より小さく見える。確信が持てない。 ジェット機のようで好まれる
         

セスナ航空機


期待したとおり、セスナ社は高翼機に固執する理由についてより公式なアプローチだった。エンジニアのスコットランドルは、

「航空力学的に、高翼機は、水平飛行での安定性、上昇時のドラッグの少なさ、リフトの多さ、グライド特性のよさなどの特性を持っている。さらに高翼機は特に低速飛行時左右方向の安定性が抜群である。また、高翼機は重心許容範囲が広い。」

「低翼機は翼と胴体のエアーフローの分離を避けるために、長く続くトレーリングエッジを接続部に持つ必要があり、最小のドラッグとしたいような用途、例えば水上飛行機のフロートプレーンなどは絶対高翼機となる。」

「低翼機は上反角効果が少ないため、胴体への接続時、上に反った接続をして、特に低速でフラップを下ろした状態でのローリング方向の安定性を増すようにしている。しかしこれは、時折フラップをしまった状態では過度の効果を生み、乱気流時に不快なダッチロール現象を生む。」

「短い着陸装置の低翼機は、プロペラが跳ね上げた石などで損傷しやすい。特に小穴やブッシュ、雪の小山などがある滑走路では危険である。また、低翼機の水上飛行機は、ハンドレールなどのあるドックに横付けしずらいなど多くの理由で、まず存在しない。」

「高翼は上下の視界がよく、観光や場所取りなどによい。荷物の出し入れはしやすいし、高翼機のセスナは低翼機のように乗員乗客も翼の上を這って出入りする必要がなく非常に便利である。」

「高翼機は長距離飛行時の直射日光を防ぎ、乗降時にキャビンを持ち物で傷つけにくい。」


NASAによる妥協の要約

NASAに公平な意見を聞きに言った時に、シニアエンジニアが非常にわかりやすいチャートを書いて説明してくれた。残念ながら彼は匿名希望だったが、それほど彼の説明はこの問題に対して機体設計者が妥協して進めているかをわかりやすく説明してくれた。

チャート見るとき、自分が機体設計者となったつもりになるとわかりやすく、いかに設計者が数多くのファクターの間をいったりきたりしながらデザインを決めていくかがわかる。

最初に機体を軽く設計したいために、胴体との接続部に強度を要し重くなりがちな低翼機より高翼機を選択する。しかし、ある程度は早く飛ぶ機体としたくなると、高翼機の翼と機体間のストラット(支柱)が空気抵抗上じゃまになり、低翼機に戻ってくるが、すぐに翼と機体との接続部の気流の乱れに気がつく。しかし翼がフラットであれば接続部は90度で抵抗も最小となる。残念ながら、フラット翼でありながら、安定性のある機体は不可能である。このため上反角をつけて翼を接続するが、接続部の空気抵抗を減らす努力を始める。

このような努力が、中間点で妥協できるまで続けられるが、全ての問題に100%の解はなく、中庸で妥協産物となる。


我々はすべて自分なりの理由を持っている


我々が製造業者のいくつかから見たように、 彼らの答えはポイントついてシンプルだった。ビーチクラフトは着陸装置が簡単で短いから低翼機。パイパーはエンジニアの意見より顧客の意見を尊重しているようだ。実際金を払うのは顧客。セスナは論理的に解析して高翼機を選択した。世界中の飛行機の半分がセスナ機であることを考えるとセスナの技術者に口論して勝つことは難しいことがわかる。

しかし、高翼機では燃料補給がめんどうだし、クロスウインドでは、だから低翼機がいい。あ~、また始めてしまった。

Plane&Pilotマガジン 2002年2月号より