松井、日本人個人最高額の5000万円寄付
ヤンキース松井秀喜外野手（３０）が６日、帰省中の石川県根上町役場を訪れ、スマトラ沖地震の復興に役立ててほしいと、日本赤十字社あての義援金５０００万円（小切手）を平田文雄町長（６３）に手渡した。これまでもチャリティー活動には積極的だったが、史上最大の犠牲者を出し今なお被害が拡大している状況に心を痛め、個人としては異例の高額寄付を決意した。日本赤十字社によると、同地震に対する個人の寄付としては、現状で最高額レベルという。松井は被災地に１日も早く平穏な生活が訪れることを切望した。
日々拡大していく被害を、黙って見過ごすことはできなかった。松井は前夜に家族会議を開き「できたら少しでも多く出したい」と訴え、見舞金５０００万円を贈ることを決めた。この日の朝、父昌雄さん（６２）が地元にある銀行へ足を運んで工面。松井は午後、昌雄さんと日赤石川県支部の根上分区長を務める平田町長を訪ねて小切手を手渡した。その場で５０００万円という額を知った平田町長は「大変な額です。手が震えてしまいます」と声を上ずらせながら預かった。
松井「毎日ニュースで被害状況を見て何かできればと思っていた。しかも今回は史上最悪の被害と聞いている。すでにたくさんの方が亡くなられて、今後の２次災害も懸念されている。１人でも多くの方を助けるため、少しでも力になれればと思いました」。
ＣＭ契約などを含め年間で１０億円以上を稼ぐ松井とはいえ、簡単にやりくりできる額ではない。しかし、被害は今後どれだけ拡大するか分からない。平田町長には「自分がこういうことができる身分であることに感謝しています」と話したという。
アジアの人々に対しては特別な思いもある。今回の地震と津波の被害で多数の犠牲者が出たタイの隣国ベトナムには、松井の“子供”がいる。００年に昌雄さんが知人とベトナムを訪れた際、ホーチミン市郊外の小学校で野球を教えた。貧困など家庭の事情で、勉強もスポーツも断念せざるを得ない子供がいることを父から教えられ、援助を決めたという。１０人の子供たちの里親として、１人につき毎月１万３０００円から１万６０００円を援助している。１番大きい子はすでに大学生になった。松井は「ベトナムの子供たちから何も連絡はないので、被害は受けていないと思います」と安どの表情を浮かべた。
年末年始を実家で過ごした松井はこの日の夜の便で帰京した。１週間の滞在中、ファンや町民との触れ合いやチャリティー活動に多くの時間を費やした。「帰省でゆっくり休めたことは１度もないかも。でも故郷に帰ってくることができたことが一番だし、それで満足。本格的な自主トレもそろそろ始めるつもり」。この日、ヤ軍は春季キャンプの日程を発表した。お金だけではない。グラウンドでのプレーでも多くの人々を勇気づける。【広瀬雷太】
［2005/1/7/09:40 紙面から］
写真＝５０００万円を寄付するため、父昌雄さん（左）とともに故郷の石川県根上町役場を訪れた松井（中央）
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