特殊コラム
第6回 ここはどこ? わたしはだれ?(その2)
さすが!ナタル戦闘指揮官、空間認識は完璧です。ご指導ご鞭撻ありがとうございます。
 気がつきゃとっくにSEEDも終わり、日々は新しいフェーズになだれこんでいく今日このごろ。余韻に浸る間もあらばこそ、SEED世界での位置表示法、その続編。
 ある瞬間における任意の物体の位置というのは、縦、横、高さの三つの座標で表すことができます。これに、その物体が存在している時刻を加えた四つの座標が、いわゆる4次元。我々の宇宙のことを「4次元時空連続体」と呼ぶのはこの意味から。だから普通に考えれば、地球−月系を舞台にしたSEEDでは座標の原点を地球に置いてすべての物体の位置を決定すればよろしい。これは地球を中心にした絶対座標系で、いわば、神の視点から地球−月系を俯瞰したもの。地上なら、経度・緯度・高度+時刻による表記、ということですね。地図の上での表記といってもいい。これに対して、戦争映画などではよく「XX時の方向に敵機!」みたいな表し方をする。これってーのは、自分自身を座標の原点にして全方位を時計の文字盤になぞらえたた表記法。この場合、相手が動かない目標であっても、こちらが移動すると表記が変わってしまうので、相対座標系と呼んどきましょう。絶対座標での表記が地図上で相手の位置を確認するのに適しているのに対して、相対座標表記は自分を中心に、直感的に相手の位置を知ることができる分、より戦闘向きといえるでしょう。
アークエンジェル「上方セクターのインディゴのD」の位置は、敵かから見て弾幕薄いです。
 もうおわかりになる通り、SEEDでの宇宙における座標の表記は、全部この相対座標によるものです。えー、突っ込まれる前にさっさと白状すると、SEEDでは絶対座標系の設定で艦船や天体の位置を表したことは一度もありません。なんでかといえば、そんなことをしてしまうと、作中におけるそれらの位置関係が厳密に決まってしまうから。つまりそれらは決めたくないんだな(爆)。なぜ決めたくないかといえば、そりゃもうあなた、ボロが出ないように(以下自粛)。もちろんこの表記だけではダメダメなのは明らかなわけで、たとえば艦隊行動を起こっている場合、アークエンジェルから見て1時の方向に敵がいるとしても、エターナルからは10時の方向になってしまうかもしれない。もちろん、上下の位置関係が違う可能性も大いにある。ましてモビルスーツが入り乱れるようになったら、そらもうワヤですわな。というわけで、そもそもこういった通信自体、本作品ではセリフとして扱わないように配慮しているわけです。まあ、絶対的な座標はデータ通信で直接コンピュータ同士がやり取りしてるのだと思ってもらえればよいかと。
 そんなわけで、座標表記のためライター諸氏に配布した設定の一部をちょろっとご紹介して、6回に渡った本コラムのラストを飾ることにいたしましょう。
これでSEEDのなぞがひとつ解けた!

 ■宇宙空間における方位・座標表記の方法について■
(中略)
 座標系の原点に宇宙船を定義した相対座標表記法を、以下のように設定します。
※座標の中心、つまり原点を宇宙船とする。
※座標は、宇宙船の前方・後方・上方・下方・左側方・右側方の六つのセクター(区域)に切り分ける。
※それぞれのセクターは、原点を頂点とした正四角錐、つまりピラミッド型である。
(中略)
 宇宙船の進路方向は、正方形の任意の辺に正対する。
(中略)
※各セクターは、色名で識別する。
 前方セクター……セクター・グリーン
 後方セクター……セクター・ブルー
 上方セクター……セクター・インディゴ
 下方セクター……セクター・レッド
 右側方セクター……セクター・オレンジ
 左側方セクター……セクター・イエロー
●6セクターの4分割
※各セクターはさらにそれぞれの正四角錐の底面を4等分する形で、頂点を同じとする四つの四角錐に細分化される。
*セクターを4分した区画は、頂点側から見て左上から時計回りに下記のように呼ぶ。
 アルファ……Aの意
 ブラボー……Bの意
 チャーリー……Cの意
 デルタ……Dの意
 セクターの中心部……ゼロセンター
(後略)
……ってな具合。実際のシナリオでは、これにいろいろオカズをくっつける。現実にはここまで設定しなくても差し支えはないんですが、頼まれもしないのについそれを作っちゃうのは設定屋の悲しい性(泣)。
 ともあれ、これをマスターして、周囲の友達の位置をナタルやノイマンみたいに呼んでやれば、きっとクラスや職場の人気者(変わり者)になれること請け合いだ。目指せ、CIC勤務!

■著者プロフィール・森田 繁(もりた しげる)■
スタジオぬえ所属。学生時代に『ガンダムセンチュリー』の編集に参加し、そのまま業界入り。『超時空要塞マクロス』を皮切りに様々なアニメーション、実写、ゲームなどの企画に携わる。時には小説も書く。『∀ガンダム』で設定考証、『ガンダムSEED』では特殊設定と脚本を担当。

もどる




© 創通エージェンシー・サンライズ・毎日放送
注意:内容および画像の転載はお断りいたします。
作品に関するお問い合わせはこちらまで