コチニール色素

 

着色料は、合成着色料と天然着色料に分類されます。

天然色素は「天然」とは言うものの、使われている原材料のためかその色素の使用について不安に思われているものがあります。

中でも「コチニール色素」は、原料が虫であることもあり、嫌がられています。

虫だから嫌だという感情的なことでコチニール色素のものは絶対食べないという意見をよく目にしますし、私の方にもそういった内容のメールが良く届きます。

コチニール色素 <用途>清涼飲料水,冷菓,菓子類,ハム,ソーセージなど <表示>用途名併記で「着色料(コチニール)」,「コチニール色素」と表示されます。 

イチゴ牛乳や、ファイブミニに使用されており、気になる方も多いようです。


食品以外では次の分野で使われます

テキスタイル染色   和服 布地 繊維 織物 紙 染め物 草木染め 
化粧品 口紅 頬紅 マニュキア ヘアーダイ アイシャドー
錠剤 粉末剤 飲み薬
医療分野 マーカー
病理検査 細胞染色 蛋白質染色
顔料 退色しない高級赤インク(つけペン)  絵の具

すごく多岐にわたって使用されているのが分かると思います。実は昔からコチニール色素は生活に密着しています。

「えんじ色」って聞いたことがありませんか?コチニール虫とは「えんじ虫」のことです。紅蟲、臙脂蟲、ラックカイガラムシ とも呼ばれます。

他のHPでも書かれていました。”原料が虫だということで、いやがる人がいますが、これは「虫差別」の一種です。”


そこでこのページではコチニール虫について詳しく説明して、コチニール色素の安全性について述べて行きたいと思います。


ちょっとまとめてみましょう

コチニール虫とは? カイガラムシ科のエンジムシ(Coccus cacti コカス カクティ)の仲間
生息について サボテンの表面に生息します。
ウチワサボテン属ベニコイチジク <Opuntia coccinellifera オプンティオ コクシニリフェラ>、<Opuntia tuna オプンティオ ツナ>いうサボテンだけに生息します。
主要産地 中南米のペルー、エクアドル、チリ、メキシコが主要産地で、他に、ケニア、西インド諸島、カナリア諸島、スペインなどで産します。
生産方法 コチニールのメスにしか色素は含まれません。

雨期が終ったら他の場所で飼育していたコチニール虫のメスをサボテンにのせます。
するとすぐ卵を生み始めます。卵からかえった幼虫はサボテンを繭のような糸を出して被い始めます。
コチニール虫はオスの数が極めて少ないです。メスは卵をもつと2倍に膨らみます。
そのメスを卵を生む前、人間が手で刷毛を使ってかき集めます。熱湯で煮沸した後、天日で乾燥させたものが原料となります。

乾燥したコチニールを水やエタノールで抽出したものがコチニール色素となります。
生産量 乾燥したコチニールの生産量は全世界で約1150トンに昇り、日本の消費量は120トンになります。

特にペルーでは世界の80%以上もの800トン以上の乾燥コチニールを産します。

他の産物よりも高価格で取引されるため、産物が少ない貧しい地域での重要な収入源となっており、現在では大規模なプランテーションが各地で行われています。
構造式


主成分(主色素)はカルミン酸というもので、橙色〜赤紫色を しています。

色調 最もよく使われるのは中性溶液での赤色(写真)です。

酸性溶液では橙色、中性溶液で赤色、アルカリ性溶液で赤紫色、となります。

あまりはっきりとした綺麗な色ではありません。(ややボケた色です)




プランテーションでのサボテンの栽培の様子です。
このサボテンにコチニール虫をつけていきます。
表面の拡大図です。サボテンの針は作業上、抜いてあります。


原産国では親しみのあるものでして、切手のデザインになったこともあったみたいですね。
カーボベルデ 1988


コチニール色素の歴史は非常に古く、古来インカ帝国の時代よりこの色素を洋服や装飾品の着色に使用されてきました。

また、カンパリという有名なお酒の着色にも古くから使用されてきました


安全性について

コチニール色素は熱や光に対して非常に強い(安定している)ため、現在ではアメリカやEU諸国など多くの国で食品の着色に使用されています。

安全性の面では天然色素の中ではもっとも高度なレベルまで評価が行われおり、安全性についてのデータが最も多い着色料です。

コチニール色素は、食品添加物ガイドラインで要求される安全性試験項目は全て終了しており、安全性に問題がない結果が得られています。

反復投与毒性試験,発がん性試験,変異原性試験などが行われていますが,いずれの試験においても毒性は認められていません。

JECFA(※)では、ADI(一日摂取許容量)はカルミン酸として5mg/day/kg体重と評価され、高い安全性が認めらています。


※JECFA
  国際食品規格委員会の諮問機関のひとつ
  FAO(国際連合食料農業機関)/WHO(世界保健機関)合同食品添加物専門委員会


コチニール色素の赤色はあまり綺麗な色ではありません。しかし、赤色の着色料として長く使われてきた「赤色2号」が合成着色料であり、あまり消費者に受け入れられなくなってきたために、天然着色料である「赤キャベツ色素」と同じく「コチニール色素」が使われるようになってきました。

★赤色2号・・・アメリカでは使用禁止であることから、赤色2号を嫌う人が多いです。
しかし、赤色2号は日本やEU諸国では使用されています。
それは、アメリカでの実験に不備があると思われるからです。
日本やEU諸国で再実験の結果、安全性が確認されたので使用しています。
蛇足ですが合成着色料のうちタール色素の使用量を人口から計算すると、アメリカ人は日本人の20倍の量の使用しています。



アレルギーについて

コチニール色素の試験は現在も継続して進められています。

2000年の第55回JECFA会議でコチニール色素及びカルミンにアレルゲンが存在する可能性があると報告されました。

1979年にカルミンによる職業性喘息が起こると報告されたのが始まりで、その後もカルミンを継続的に吸入することで喘息が起こると言う報告があり、コチニールによるアレルギーが知られるようになりました。

さらに、コチニール色素を用いた食品や化粧品でのアレルギー発症事例も報告され、食物アレルギーの原因になる可能性が報告されましたが、実際には食物アレルギーの発症報告は少なく、アレルゲンの特定も明確でないことにより大きな問題にはなりませんでした。

このような騒ぎのこともあり、コチニール色素は有害であるレッテルが貼られてしまった経緯もあります。

このときのことを挙げてコチニール色素はダメだと言う人たち(団体など)も一部存在します。

しかしながら食品添加物は口に入るものであることからその安全性確立に対する姿勢は他の薬品の比ではありません。

日進月歩する製造技術・分析技術・医療技術を用いて日々研究が重ねられています。

ですから、ことに食品添加物についてはほんの数年前のことでも現在はさらに進歩・改良されています

何年も前の報告事例を挙げて批判するのは現実的ではありません

さてやや脱線しましたが、その後研究が進みコチニール色素のアレルギーに関する報告から、アレルギーの原因はコチニール(虫)の特定のたん白質である可能性が分かりました

その結果、特定のたん白質を除去する製法が導入され、低アレルゲンコチニール色素が開発されました

色素の原料が虫だからとか、アレルギーがあるというのは感情論に過ぎません。

アレルギーが起こったのはコチニールから色素を取り出す作業員たちに起こったもので、「職業病」喘息です。

前述のように現在は問題点は克服されています。


不確かな情報に惑わされないように心がけましょう。


すこしの人でもこのHPを読んで、コチニール色素が入っているといってなんでもかんでも倦厭するする姿勢を改善してもらえたら本望です。

 

 

 

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