ハリ−  
タカく飛べ ジェット風船
■ 元祖は広島カープ 数では阪神に軍配 課題はリサイクル ■
 七回裏、福岡ドーム(福岡市中央区)。福岡ダイエーホークスの攻撃が始まる前、応援歌の大合唱とともに、色とりどりのジェット風船が勢いよく宙を舞う。その数は、多いときで三万個。「これがあるけん、福岡ドームは最高たい」。ファンの一体感も最高潮だ。でも、「そもそもだれが、ジェット風船を上げ始めたんだろう?」。優勝へのカウントダウンを続けるホークスは、日本シリーズで、これまた派手なジェット風船応援で有名な阪神タイガースとの対決が濃厚だ。「ならば」と、ジェット風船の秘密に迫った。
(社会部・斉田康隆 9/6西日本新聞夕刊掲載記事)

 ■ 紙テープの代用 ■   
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華々しくジェット風船を飛ばす福岡ダイエーホークスのファン =福岡市中央区の福岡ドーム
 「ジェット風船の本家本元は、やっぱり阪神」。そう思い込み、インターネットで調べていると、意外な記述を発見。
 「ジェット風船を最初に飛ばしたのは、甲子園球場のカープファン」
 早速、近畿カープ後援会事務局の実谷美恵子さん(45)に尋ねると、「ええ、そうですよ」とあっさり。実谷さんによると、一九八三年ごろ、甲子園球場で、応援用の紙テープや紙吹雪が「試合進行の妨げになる」と禁止に。代用品として白羽の矢がたったのが、カープ応援団の一人が偶然、街中のおもちゃ問屋で見つけたジェット風船だった。
 「当時は、三塁側の内野席が応援団の定位置。五回表のカープの攻撃前に上げていたんです」。わずか十五人足らずで上げていたジェット風船は、徐々に宿敵阪神ファンにも広がったという。

 ■ 6球団が飛ばす ■   
 現在、プロ野球十二球団のうち、ファンがジェット風船を飛ばすのは、阪神、ダイエー、広島、西武、近鉄、ロッテの計六球団。中でも、虎ファンが甲子園球場(五万三千人収容)で一試合に飛ばす風船の量はダントツで「五万個は下らない」(阪神球団)という。
 一方、ダイエーも、福岡ドーム(四万八千人収容)で一試合平均二万―三万個。四千―一万個の他球団を大きく引き離し二位。ジェット風船は四個入り二百円で販売されているから、一瞬にして百五十万円が宙を舞っていることになる。しかも、七回裏の赤や青の風船とは別に、ホークスが勝つと、試合終了後、白星専用の白いジェット風船を飛ばすのは鷹ファンだけ。福岡ドーム店舗・施設部の伊藤和也さん(29)は「量ではかなわなくても、風船に吹き込む気合は負けていません」。早くも日本シリーズでのジェット風船対決に注目が集まる。

 ■ 3ドームは禁止 ■  
 札幌ドーム、東京ドーム、ナゴヤドーム。いずれも、「天井に風船が引っかかる」などの理由で、ジェット風船を禁止している。では、なぜ福岡ドームでは、OKなのか。その秘密は風船の材質と形にある。
 ホークスが九三年、本拠地を平和台球場から福岡ドームに移すとき、福岡ドームの担当者が、メーカーに風船の改良を依頼。従来のこぶが一つできる「ツクシ型」風船は、硬めのゴムを使っていて、収縮力が強かったため、天井に届いてしまう恐れがあった。改良品は、柔らかいゴムを採用して推進力を抑え、滞空時間を長くするため、こぶが二つできる「二段型」に変更。風船が飛ぶ高さは、十数メートルから六、七メートルまで落ちたという。
 今後の課題は、可燃ごみとして処理されている使用済みジェット風船の再資源化。伊藤さんは「環境の時代でもあり、リサイクルの方法を探りたい」と前向きだ。  いつも何げなく飛ばしているジェット風船。そこには、野球を愛する人たちの歴史、情熱、知恵が凝縮されている。


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