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谷川に放水される「大清水」の源水=群馬県水上町谷川で |
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上越新幹線・大清水トンネルからわき出る谷川岳の天然水を使った、JR東日本の「大清水」ブランドの飲料水の売れ行きが落ち込んでいる。JR側の人手不足もあって、自販機を「大清水」専用機から、詰め替え作業を委託できる他メーカー商品との併用機にくら替えしたところ、大手メーカーの清涼飲料水との競争に苦戦を強いられたためだ。分割の縄張り競争のカベにも阻まれ、JRの他社管内に販路を伸ばせないのも痛い。
「大清水」は82年に開通した上越新幹線の大清水トンネル(全長約22キロ)を掘削中にわきだした。ゆう水量は、毎分60トン。谷川岳の地層を数百年かけてくぐり抜けてきた天然水で、当時は作業員だけが口にできる評判の「うまい水」だった。
「赤字減らしに役立てば」。当時の国鉄高崎鉄道管理局の瀬間勝利工事課主席が、缶詰にして売り出すことを発案、84年に商品化した。16キロ離れた上毛高原駅高架下のタンクまでパイプでひき、タンクローリーで吉見町の工場に運んで製品化し、主に首都圏のJR駅構内で売ってきた。
トンネルは「ダイ清水」だが、おいしい水にひっかけて「オオ清水」と読む。民営化後に販売を担当したJR東日本の子会社「ジェイアール高崎商事」(本社、高崎市)が、お茶、コーヒー、健康飲料……と商品を増やしたところ売り上げは急上昇。94年度の「大清水」ブランドの売り上げは58億7500万円に。だがその後は、下降線をたどり、昨年度は39億1400万円に落ち込んだ。
要因として、同社商品開発課は、JR駅構内に置く専用機の減少を挙げる。84年度には東京、埼玉、神奈川のJR各駅で専用機が479台(全体の32%)あったのに比べ、昨年度は、自販機の総数は増えているにもかかわらず、専用機は346台(全体の15%)に減った。併用機だと、PR力に差がある大手メーカーの清涼飲料水を相手に分が悪い、という。
手をこまねいていたわけではない。ここ数年は、「大清水」ブランドの新製品開発にも努めてきた。豆腐、氷、一昨年は地ビールも出した。
今秋には、コーンポタージュとココアを新発売し、12月に迫った東北新幹線八戸延伸に向けて、新幹線をデザインした記念缶も発売する。
同社の佐藤栄一郎課長は「人気が落ちたわけではないのに、専用機に並ぶ絶対量が少なくなったのが痛い」。JR東日本管内にとどまらずに販売網を広げたいところだが、「そこには暗黙の了解がありまして……」。
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