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強毒型鳥インフルエンザ専門家会議の概要

(社) 日本養鶏協会
事務局


I. 日時 平成14年4月1日 13:30〜17:00

II. 場所 馬事畜産会館 第2会議室
東京都千代田区神田駿河台1-2

III. 出席者  
 
農水省: 山本 洋一 農林水産省生産局畜産部畜産技術課課長補佐
  星野 和久 農林水産省生産局畜産部衛生課家畜衛生専門官
委 員: 大槻 公一 鳥取大学農学部獣医学科教授(家畜微生物学)
  喜田  宏 北海道大学獣医学部教授(微生物学)
  杉村 崇明 鹿児島大学農学部獣医学科教授(家畜微生物学)
  山口 成夫 (独)動物衛生研究所感染病研究部長
オブザーバー(各地域推薦)
  岩崎 正幸 北日本地域協議会
  齋藤 太洋 関東甲信越地域協議会
  中澤 廣司 中部地域協議会
  新延 修 中国四国地域協議会
  橋本 信一郎 九州地域協議会
事務局
  島田 英幸 (社)日本養鶏協会 専務理事
  武田 隆夫 (社)日本養鶏協会 事務局長

IV. 会議の概要(要点のみ)
 
農林水産省生産局畜産部畜産技術課 山本課長補佐の挨拶の後、会議開催の趣旨として協会事務局から配付資料に基づき、(1)国際問題対策特別委員会報告(3種)、(2)鳥インフルエンザ対策強化に係る国への要望書(2種類)、(3)養鶏協会ホームページにおける鳥インフルエンザ関係情報の提供状況等を説明の後、具体的な検討課題として特に危機管理対策の観点から鳥インフルエンザ問題について検討を行いたい旨説明した。
 
  1. 強毒型鳥インフルエンザウイルスとして検討対照とすべきインフルエンザウイルスは、H5、H7又は非常に病原性の強い鳥インフルエンザは家禽ペストとして扱われるが、H5、H7を中心に検討の対照とすべきである。
    家禽ペストはOIE(国際獣疫事務局)の基準では75%以上の致死率を有するものとされているのが、現実的には接種試験等による本病確認までには一定の時間を要するため国としてはH5、H7を含めた致死率の高いインフルエンザウイルスが検出される事例については、取敢えず家禽ペストと判断して対応することとなる。
  2. 高病原性の鳥インフルエンザウイルスは、毎年、鴨により北方から運ばれていると考えるべき。
  3. 各ウイルス型の病性は実験室内とフィールドのものとは病原性が異なるのではないか。
  4. '97年に香港で発生した18人感染、6人死亡の鳥インフルエンザ(H5N1)は、人獣共通伝染病として考えるのではなく、人間の医学におけるインフルエンザ対策として考えるべきである。(既に、自分達も必要となる場合に備えてワクチン用の候補株は確保している。)
  5. (独)動物衛生研究所としては、動物由来感染症についてのサーベイランスを実施中であるが、'97年の香港における発生後にウイルス分離を試みてきているが、これまでには検出されていない。
  6. サンプルの取り方の工夫をし、同一の場所で毎月1回年間通して継続的に検査を続ける必要がある。抗体陽性でも症状の出ていないものがある。抗体陽性の場合でも、ウイルス分離ができない場合がある。
  7. 別途、鳥取大学においては卵黄中への移行抗体をゲル内沈降反応によりサーベイランスを実施中である。(鶏卵自主基金事業部関係)
  8. サーベイランスについては、成鶏を用いての抗体調査を特定養鶏場で月1回、10〜20サンプルで全国の南から北で5〜10ヶ所以上を2〜3年継続して定点観測により実施(ウイルス分離と抗体確認)すべきである。検査対象は鶏のみでよい。これにより検出されなければ、日本には鳥インフルエンザはないと考えてもよい。この場合、検査には同一抗原を用いるべきである(統一的な検査キットの用意が必要)。検査対象には平飼鶏舎がよい。
  9. 鶏と鴨はウイルスの増殖部位が異なる。鶏は呼吸器で先ず感染する。(呼吸器スワブで検出が可能)
  10. 野鳥との接種がなければ鶏にインフルエンザウイルスが侵入する可能性は少ない。鳥から鳥へのインフルエンザウイルスの伝播力は弱い。従って、鳥インフルエンザ対策のためには野鳥を保有したりこれを鶏に近づけないことが大切となる。 こうした観点から合鴨農法は鳥インフルエンザ対策上は危険な存在である。また、同様理由により中国からの“家禽肉等の一時輸入停止”解除に当っても鴨は解禁の対象にはしていない。
  11. 合鴨との接触を考えると開放鶏舎、平飼鶏舎は鳥インフルエンザ対策面からは危険である。また、ペット関係鳥類も危険な存在である。
  12. 輸入鶏肉を検査対象とすることは、ウイルスの全身感染の事例(発症事例)の検出を意味する。これまで鶏卵、鶏肉を介してウイルスが侵入したことはないとされており、不要ではないかとの発言に対し、オブザーバー出席者からは海外では同じフロアで死鳥まで検査して国内流通用に出荷する事例が有り得る、又、相手国の証明書のみで輸入されてしまうのが現実との発言。
  13. インフルエンザ対策にはワクチンを使用すべきではない。 ワクチン使用した対策事例では、むしろ撲滅ができなくなっている。これまでどの国でも発生した時点で発生地点の5〜10km範囲の鶏を直ちに淘汰することで撲滅できている。
  14. ワクチン使用により抗体が陽性となり、野外感染による鶏群との区別が困難となり、淘汰も困難となる。国内に鳥インフルエンザが蔓延した時に初めてワクチンの使用を考えるべきである。アメリカでは七面鳥用のワクチンを開発しメキシコで使用したがインフルエンザを全く撲滅できなかった。現在、アメリカでは摘発、淘汰が鳥インフルエンザ対策の基本である。又、これしかない。
  15. オブザーバーから近年、鳥インフルエンザは増加傾向にあるのかとの問いに、検査技術の向上とペンシルバニア州の事例で分るように関係者が熱心に検査を実施しているため、今まで不明だったものが発見され易くなっているためと考えているとの回答。
  16. 香港では、'97年以降もH5N1の再度の発生により約120万羽が殺処分されているが、人間の死者が出ていないためかマスコミの話題にもならなかった。
  17. オブザーバーから日本の養鶏は病気を発見し難い産業構造になっているとの発言。(病気を発見しても)手を挙げない。
  18. 対策としての鶏の殺処分は、農場単位で行うべきである。
  19. '83年のベンシルバニア州の事例では、
    (1)鴨好きで鴨を飼っている養鶏場主がいて、この地域が渡り鳥ルートの真下で水が完全に汚染している → 鴨に餌を与える → その後鶏に餌を与えるとの循環による、
    (2)当初、連邦獣医局の検査では、殆んど病原性はなかったがその後、ホコリも含めて病原性の高いウイルスが広範囲に分離されるようになった。
  20. '97年の香港のH5N1の事例では650万人の人口に対し18人感染、6人死亡した。しかし家族間でも人間から人間への感染の事例もなく、本来的には鳥インフルエンザウイルスの人間への感染力は非常に弱く(ウイルスが大量に入った場合等、はっきりとした原因は不明であるが)特殊な事例の感染と考えるべきものである。アメリカ、イタリアの発生事例においても人間への感染の事例はない。
  21. オブザーバーからは中国から飛来する黄砂により鳥インフルエンザウイルスが運ばれてくることはないかとの問いに対し、委員からはないと考えるべきとの回答。
  22. 今後、国と(社)日本養鶏協会が連携して鳥インフルエンザ対策のための防疫対策要綱の指針等を策定することが必要。

  1. 当該内容は、会議の概要を(社)日本養鶏協会事務局の理解のもとに独自に作成したものである。
  2. このため、各委員本人の趣旨、意図と齟齬(そご)をきたす可能性があることは予めご了知願いたい。
文責:社団法人 日本養鶏協会事務局