日本ウミガメ協議会よりお知らせ 4/5/2002

2002年4月
 ご 挨 拶

  573-0163 大阪府枚方市長尾元町5-17-18-302
       NPO法人 日本ウミガメ協議会
          会長   亀崎 直樹

 拝啓
 皆様におかれましては益々ご清祥のこととお慶び
申し上げます。
 さて、この3月に財団法人海中公園センターの解
散にともない、皆様によって支えられてきた竹富町
黒島の八重山海中公園研究所も閉鎖の運びに至った
ことは既にご存じの方もいらっしゃると思います。
 つきましては、様々な方々からの存続の要望があ
りましたし、また、串本海中公園の内田紘臣氏とも
何とか活動を維持する方法を模索して参りました結
果、名古屋鉄道・串本海中公園および海中公園セン
ターのご理解とご協力をいただき、私が会長を務め
ます特定非営利活動法人日本ウミガメ協議会が、施
設を名古屋鉄道から賃借しその運営を引き継ぐこと
になりました。
 問題になるのはその運営予算ですが、委託調査の
請負、黒島の海洋自然のガイドサービスでの収益、
竹富町の助成でまかない、不足分は日本ウミガメ協
議会からの補填を予定しています。また、将来的に
は隣のマリンビレッジ等とも協力し、大学や専門学
校の研修施設としての位置づけも模索していきたい
と考えてます。このような方針は既に竹富町長、同
議会議長、教育長、さらには環境省、黒島マリンビ
レッジにも説明し、協力を要請いたしました。
 また、研究所の実際の運営は学生時代から八重山
研究所に出入りしてきた島達也にアルバイト待遇で
担当させ、他にボランティアの研究者を数名常駐さ
せる予定です。予算が許せば、将来的に島達也を日
本ウミガメ協議会職員にする予定でいます。
 さて、日本ウミガメ協議会とは1990年に発足し
たウミガメに関する研究・保護に関する活動を行う
団体で、会員数は約450人です。2000年には内
閣府によって法人格(特定非営利活動法人)を与え
られております。現在、有給職員は6名、常駐のボ
ランティアは5名おり、本部(大阪府枚方市)のほ
かに東京事務所、小笠原海洋センター、奄美大島事
務所を運営いたしております。年間の予算規模は
3500万円です。尚、亀崎はボランティアで会長を
務めております。
 以上簡単にご説明申し上げましたが、亀崎がこの
施設の運営を引き継がせていただいた訳にはいくつ
かあります。私の八重山でのウミガメ研究の基地を
保存したいというのも大きな理由ですが、八重山海
中公園研究所の次の社会的役割を守りたいという気
持ちが重要な要素となっています。

1 本施設のような自然保護を念頭においた研究所
 は、大部分が公的機関によって運営されており、
 本施設のように民間によって維持されてきた例は
 希有なこと。また、それゆえに自由な研究環境が
 提供されたこと。
2 多くの研究機関が次々と都市部に集約される中
 黒島という極めて僻地に存在し、さらにそれが
 30年も存続した施設であること。
3 机上主義の研究者ではなく、極めてフィールド
 重視型の研究員で構成され、地域住民との距離も
 極めて近かったこと。
4 八重山諸島におけるサンゴ礁のモニタリングや
 黒島のウミガメ産卵のモニタリングなど、20年
 以上も続く通常の研究施設では不可能な長期に渡
 るモニタリング活動を実施してきていること。

 以上のような状況で運営を引き受けることにはい
たしましたが、今後の運営については是非とも皆様
のご協力をお仰ぎしなければいけません。お時間が
おありのときは、是非、黒島に足を運んでいただき
遠慮なく叱咤激励していただければ幸いです。
 また、大きな問題はやはり運営費の捻出であるこ
とは言うまでもありません。今後のご協力をお願さ
せていただくとともに、ここにご報告がてらご挨拶
申し上げる次第です。
                     敬具


「ウミガメ講座」

 日本ウミガメ協議会のご厚意で、協会機関誌であるMARINE
TURTLERより、「ウミガメ講座」の転載を開始します。
 第1回は、松沢慶将氏の「ウミガメが夜に脱出するしくみ」
です。良くテレビでも目にする光景ですが、なぜ、夜なのか?
案外、誤解もあるようですね。

  ウミガメ講座ー1「仔ガメが夜に脱出するしくみ」
      日本ウミガメ協議会 松沢慶将
(日本ウミガメ協議会会報、MARINE TURTLER, 1より)

 ウミガメはその名の通り生涯を海で過ごす海洋動物ですが、
その一生は地中動物として始まります。砂の中に産み落とさ
れた卵から、早ければ産卵後40日あまり、遅くても80日ほ
どで仔ガメが孵化します。砂の中で生まれた仔ガメは生き埋
めになってしまうことなく、数日後には地表に脱出してきま
す。巣穴は地表から50cmほども下にあります。一説には砂
浜にできた車の轍を乗り越えられないとも言われる仔ガメが、
そんなに深いところからどのようにして脱出してくるのでし
ょうか?
 孵化直前の卵の中で、半分は仔ガメが占めていますが、残
りの半分は羊水や老廃物を含む水分です。仔ガメが卵の殻を
破って外に出るときに、この水分は下へこぼれ、卵の殻は潰
れてしまうので、巣穴の中には余分な空間ができるわけです。
仔ガメが動き出すと、天井の砂が徐々に崩れ落ちます。その
中を這い上がって、仔ガメは上へ上へと移動していくのです。
 地表へ向かった仔ガメは、闇雲に掘り進むわけではありま
せん。多くの場合は、10cmほどの深さまで到達すると一旦
そこで待機します。そして、夜になると一斉に脱出するので
す。フロリダの海岸で地表への脱出のタイミングについて詳
しく調べた例によると、約4分の3の脱出は、午後10時から
午前2時までに起こっていました。例外的に大雨が降った後
には日中でも脱出することもあり、特に雨が多い屋久島では
このようなことが頻繁に起こりますが、基本的に仔ガメは夜
に脱出します。なぜ、昼間ではなく夜なのでしょうか?
 昼間、砂浜の表面は50℃以上にもなります。仮に仔ガメが
昼間に地表に脱出してしまったら、波打ち際にたどり着く前
に暑さのために死んでしまうでしょう。また、昼間は、目が
よく利く大型の捕食者が空からも海からも仔ガメを狙ってい
ます。仔ガメが夜間に脱出するようになったのは、このよう
に昼間は生存のために不利な条件ばかり揃うからだと考えら
れています。では、仔ガメは砂の中で、どのように脱出のタ
イミングを見計らうのでしょうか?
 ヒントは、通常は夜間だけに、そして大雨の直後には昼間
でも脱出することがあるという点にあります。両者に共通す
ることは、地表近くの温度の低下です。実際に、アカウミガ
メの脱出が起こる時の砂の温度を詳しく調べた例によると、
地表の温度が32.4℃以上であることはほとんどなく、最も多
かったのは、これより僅かに低い温度の時でした。また別の
研究では、仔ガメは周囲の温度が高いと、その活動性が著し
く低下することが分かっています。仔ガメは、砂の温度が熱
い状態を嫌い、周囲が適度に涼しくなることを手がかりに脱
出のタイミングを見計らっているのです。
 夏、ウミガメの産卵地の砂浜には、いろんな人がやって来
ます。大勢仲間を引き連れてきて、ウミガメについていろい
ろと説明をはじめる人も少なくありません。何食わぬ顔で聞
いていると、「ウミガメは、産卵された時と同じ時間にかえ
るから、仔ガメを見たかったら、産卵したときの時刻を覚え
ておくといい。」とか、「ウミガメの赤ちゃんは、大潮の満
潮になると砂から出てきて海に向かうんだ。」と言う珍説も
飛び出します。
 みなさんは、どんな珍説を聞いたことがありますか?

    日本ウミガメ協議会事務局より
    STSmembers加入のお願い

 日本ウミガメ協議会はウミガメのことを考えるあらゆる立
場の人間の集まる場です。ウミガメに標識をつけてその行動
を追跡したり、全国一斉に死体の調査をしたり、あるいはイ
ンドネシアやモルジブで調査を行ったり、また、行政と協力
してシンポジウムを開催したりと、その活動は多様で活発で
す。会の運営は皆様の会費で成り立っております。
 会員(STSmembers)には各地から寄せられるウミガメ
ニュースをまとめたウミガメ速報がE-mailで配信され、日本
のウミガメの現状が手に取るようにわかります。是非入会し
て活動を助けて下さい。
 入会していただける方は、氏名、年齢、住所(郵便番号)、
電話番号、ファックス番号、電子メールアドレス、会員種別
をお知らせ下さい。尚、年会費は個人会員:3千円、学生会
員:1千円、団体会員:1万円です。
問合先:日本ウミガメ協議会事務局、
電話072−864−0335、
郵便振込:00940-3-1095

  特定非営利活動法人日本ウミガメ協議会
573-0163 大阪府枚方市長尾元町5-17-18-302
TEL:072-864-0335, FAX:072-864-0535
E-mail:JCG03011@nifty.ne.jp
http://www.umigame.org  


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