IT時代の選挙運動に関する研究会について


  1. 趣旨
     公職選挙法は、選挙運動のために使用する文書図画の頒布・掲示について、同法が定める形態以外の使用を全て禁止しているが、近年技術進歩の著しいインターネット等について、利便性、コスト面等から、これを選挙運動手段として認めるため同法を改正すべきとの意見が出てきているところである。一方、インターネット等を選挙運動手段として認めると虚偽や誹謗中傷の情報が横行するのではないか等、選挙の公正確保について懸念も示されているところである。
     選挙運動をどのようなものにするかについては、選挙運動の主体である各党各会派の意向も踏まえ、国会において結論を出すべき問題であるが、インターネット等これまでにない手法を公職選挙法の体系に持ち込むためには、技術的・制度的に解決しなければならない点も多いと思われることから、インターネット等を用いた選挙運動の問題点について、洗い出しを行い、整理を行うものである。
     また、インターネット等を用いた選挙運動の検討にあわせて、現行公職選挙法に規定されている他の各種選挙運動手段についても、IT化に伴い見直す必要がないか検討を行うこととする。

  2. 調査研究の内容
     インターネットを用いた選挙運動の可能性と問題点及び公職選挙法に規定する選挙運動手段についてIT時代に即して見直すべき点についての調査研究を行う。

  3. 設置根拠
     要綱

  4. 研究会の構成
     蒲島 郁夫(東京大学法学部教授)を座長とし、委員として大学教授、民間有識者、選挙実務者等が出席(委員名簿)。

  5. 調査研究期間
    平成13年10月より概ね1年程度を見込み、毎月1回程度開催予定。

  6. 庶務
    研究会の庶務は総務省自治行政局選挙部選挙課において処理する。
  ○最新情報
    ・ 第1回議事要旨
    ・ 第2回議事要旨



IT時代の選挙運動に関する研究会について


(設置)
1  IT時代に相当しい選挙運動のあり方を調査研究するため、IT時代の選挙運動に関する研究会(以下「研究会」という。)を設置する。
(任務)
2  研究会は、次の各号に掲げる事項について、調査研究を行うものとする。
一 インターネットを用いた選挙運動の可能性と問題点
二 公職選挙法に規定する選挙運動手段についてIT時代に即して見直すべき事項の整理
(座長)
3  研究会に座長を置き、委員の互選によりこれを定める。
  座長は研究会を総理する。
  座長に事故があるときは、座長があらかじめ指名する委員がその職務を代理する。
(研究会の開催)
4  研究会は、座長が必要と認めたときに、随時、開催する。
(庶務)
5  研究会の庶務は、総務省選挙部選挙課において行う。
(補足)
6  前各条に定めるもののほか、研究会の運営に関し必要な事項は、座長が定める。




IT時代の選挙運動に関する研究会委員名簿


新井 亘  横浜市選挙管理委員会事務局選挙部長

加藤 真代  主婦連合会参与

金子 郁容  慶應大学メディア研究科教授
蒲島 郁夫  東京大学法学部教授

谷合 靖夫  (財)自治体衛星通信機構理事長

田渕 治樹  独立行政法人製品評価技術基盤機構
 生活・福祉技術センター 情報セキュリティ室長
戸波 江二  早稲田大学法学部教授

長澤 徹  東京都選挙管理委員会事務局選挙課長

野中 ともよ  ジャーナリスト

曳地 由紀雄  千代田区選挙管理委員会事務局長

前田 雅英  東京都立大学法学部教授

松沢 栄一  ニフティ法務・海外部課長
(50音順 敬称略)
◎は座長、○は座長職務代理者



第一回IT時代の選挙運動に関する研究会の議事要旨

  1. 日時  平成13年10月9日(火)

  2. 場所  総務省消防審議会室

  3. 出席委員(敬称略)
      蒲島座長、新井委員、加藤委員、金子委員、田渕委員、戸波委員、長澤委員、野中委員、曳地委員、前田委員、松沢委員

  4. 議題
     1)公職選挙法の選挙運動及び政治活動の規制について
    2)審議の進め方について
    3)その他

  5. 議事の概要
     1)小坂副大臣の挨拶が行われた。
    2)大竹選挙部長から本研究会設置の趣旨等について説明が行われた。
    3)座長に蒲島委員が、座長職務代理者に戸波委員がそれぞれ選出された。
    4)事務局から公職選挙法の選挙運動及び政治活動の規制について説明が行われ、その後、今後の審議の進め方等について意見交換がなされた。
    各委員からの主な意見は次のとおり。

    委員相互の理念を共通にする必要がある。現行制度は、新人、女性及び弱者の方々の政界への進出が困難であり、新しい人が進出できるような選挙制度にするという観点から議論が必要である。

    憲法学説においては、公職選挙法の選挙運動規制はあまりにも厳しすぎるのではないかというのが大勢の意見。また、今の選挙運動規制は、候補者中心となっており、このため選挙運動を受ける国民の視点が欠けているとの批判があり、候補者中心から有権者中心主義に立った議論、すなわち有権者の立場に立った選挙運動のあり方を当研究会の理念とするのがいいのではないか。

    インターネットの問題は不安だと思えば切りがない。最低限の基準である基本的人権、プライバシーといった守るべき大原則だけを前提としてとにかくやってみようという考え方もあるのではないか。

    ITのできる人、お金のある人、若い人、推進派の人などがどんどん進んで置いてきぼりを作らないという理念が必要である。

    インターネットは人類が知らなかったメディアなので取扱は難しい。公職選挙法は候補者や政党が選挙運動の中心にあり放送と通信がクリアに分けられていて、NHKの政見放送しか無かった時代のものである。我々は公選法のバックボーンとしてインターネットを国造りの基本としてどう位置付けるかという観点からの議論が必要である。

    一つのミッションを実現するために、いつまで、何をやるかということをはっきりすることが必要である。例えば、次の衆議院選挙までには法律を通すとか工程表や目標値を以て実現のためのプロセスをはっきりしたい。

    沿革的にも、選挙運動の規制の内容については、各党協議において決まる流れであり、インターネットについても、各党間の協議の中で決めていくことになると思われる。ただ、この場合考えられる様々な問題点については、各党も議論されておらず、インターネットの選挙運動への位置付けが必要となる時に向けてスタンスをきちんと決めたい。

    選挙運動は、政党間の様々なやりとりがあるので、当研究会で決めたことが、すんなり、審議会みたいな形で実現されるということは、考えにくい。ここでは、インターネットを導入するという前提で、現行法の問題や法規制といった実現のための太い道筋づくりをすれば、各政党でもって認めてもらえるのではないか。

    インターネットが入ってくるとおおもとの選挙運動規制法制の組み替えにまで及ぶ。また、インターネット法制と選挙運動規制の法制との絡み、名誉・プライバシーに関わる情報が匿名で流されることをどうやってコントロールするかという非常に難しい問題が入ってくる。

    インターネットでは名誉毀損が大きな問題となっている。基本的には前に進むべきことであるが、インターネットを導入する時にクリアしなければならない。どういった問題があるかを整理しなければならない。

    今の公選法ありきで、インターネットを公選法に入れる場合にどのような変化が生じるかといった問題点を整理する必要がある。

    公選法ができたのは時間も場所も人も特定できた時代である。インターネットというメディアはこうした特定・限定を超えて存在するメディアであることから既存のロジックが通用しない。その意味で進むべき方向について知恵を出すことが重要である。

    インターネットの使用方法について、電話とメールが何が違うのか。メールとHPはどう違うのか。また、紙などの固い媒体と異なり電子媒体は改竄、サービス提供をうち切るといったこともあるがこうしたことも議論すべきである。

    <文責:事務局 速報のため修正の可能性有り>


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