「チン」する
 よく使っていることばなのに、ほとんどの国語辞書に載っていないものがある。

 その一つが「チン(する)」。「冷凍しておいたごはんをチンする」のように、電子レンジで調理することをさす。語源は言うまでもなく、調理が完了した合図のチンという音から。電子レンジが登場したとき、それで調理する行為に特に名前が付けられなかった。しかし、自然発生的に「チン(する)」という言い方が全国的に生まれた。

 ある時期、「エレックする」と名付けようとしたメーカーがあったが、定着しなかった。「チン」のほうが単純明快で、使いやすいことばだったからだろう。ことばは無理やりにネーミングしてもダメという好例である。

 ところで、最近の電子レンジはチンではなく、ピーと鳴るものも多い。しかし、だからといって「ピーする」には変わるまい。「ピーする」では、腹を下しそうでイメージが悪い。(武庫川女子大教授・佐竹秀雄)



(C) The Yomiuri Shimbun Osaka, 1999