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あいつにだけは負けられない!

ライバル対決十番勝負

 今をときめく人気者には必ず、切磋琢磨しあう「ライバル」がいる。10代少女からの人気、バラエティ番組への適性、キャラクター、ファッションセンス…あらゆる角度から、エンタ!が選んだ「宿命の対決10戦」。勝つのはどっちだ。

BATTLE 1 女性アイドルユニット
SPEED vs deeps
伊秩プロデュース対決 片や少女の「夢」を歌い
片や少女の「日常」を歌う

 SPEEDのシングル累積販売枚数が、7月1日発売の7枚目『ALIVE』で700万枚を突破した(8月10日付チャートで735万7000枚)。68〜97年の過去30年間で、シングル売上が累計700万枚を超えたアーティストは、B'zから小柳ルミ子まで39組いるが、「その39組が何枚目で700万枚に到達したか」をみると平均18・7枚目。7枚目という驚異的なスピードでの到達は、Mr.Children、ピンク・レディー、globeと並ぶ史上最速タイ記録になる。

 7月18日には初の全国ツアーがスタート。三重県営サンアリーナを皮切りに、10月9〜10日の東京ドームまで全国で20公演、30万人を動員する。平均年齢15歳でのドーム公演は史上初。1万人規模の会場ばかりなのにチケットはすべて即日完売した。

 もはや10代女性ユニットではCDセールスという点ではSPEEDのライバルはいない、と言っていい。それでもあえて比較したいのがdeeps=(ディープス)だ。この2組を比べることで、今、女性ユニットがブレイクするためのヒントが見えてくるからだ。

 SPEEDは96年8月デビュー。新垣仁絵、上原多香子、島袋寛子、今井絵理子の4人組で全員が沖縄県出身。3歳から沖縄アクターズスクールに通っていた島袋を始め、幼い頃からダンスに励みアーティストを目指してきた。

 一方、deeps=は97年11月デビューでAKI、CHIKA、ERIの3人組。平均年齢は18・3歳で全員が関東の出身だ。こちらはメンバー全員がついこの間まで普通の女子高生。CHIKAはデビュー前、女子高生に大人気のストリート雑誌『egg』などにたびたび登場していたが、本格的なボイストレーニングや踊りの練習はデビューが決まってからだ。

 対照的なSPEEDとdeeps=だが、共通点がある。トッププロデューサー、伊秩弘将氏がプロデュースをしていることだ。

名前同様、コンセプトが逆の2組

 伊秩氏のSPEED、deeps=でのプロデュースの姿勢は共通している。10代少女をファンに想定していること。今の文化は女の子が作っている。だからムーブメントを起こすには、彼女たちの共感を呼ぶこと―という認識がスタッフにあるからだ。2組のプロデュースをしているアワーソングス クリエイティブも「SPEEDもdeeps=もそれぞれ、同年代の女の子が憧れの気持ちも含めて『一員(仲間)になれたら素敵だな』と思うようなグループを目指しています」と言う。

 ただし同じ10代少女をターゲットにしながら、SPEEDとdeeps=では違いがある。一言で言えば、SPEEDは「10代少女の未来へのあこがれ」を歌っている。背伸びした大人の恋愛、日常生活を抜け出して海、空、大地での心の解放、未来への希望―が基本だ。恋愛ソングの多くは「現在進行形の恋」ではなく「未来の恋」を歌っている。出てくる彼氏像は「理想の男性」だ。

 一方、deeps=は「10代少女の日常生活そのもの」を歌っている。恋愛ソングはいずれも現在進行形の恋。描かれる男性像も遊び人だったり、なかなか自分に振り向かない「あんな男」だったりする。曲中には「むかつく」「キレる」「ラブホ(ラブホテル)」など、SPEEDの曲では決してお目にかかれない、今の女子高生の話し言葉がちりばめられている。こうしたコンセプトはSPEEDをひっくり返したグループ名自体に凝縮されている。

 人間が普段考えることは「過去のこと」「現在のこと」「未来のこと」だ。過去を歌うのは演歌の専売特許で、10代少女には向かない。残るのは現在と未来。SPEEDは未来を歌い、deeps=は現在を歌う。同じ2組の若手女性ユニットを仕掛ける伊秩プロジェクトだが、その2組は理論上、差異化されているわけだ。SPEEDが売れるのも、deeps=に期待が集まるのも理由があるのだ。
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