■完全なる飼育
心と体の“格闘技”
演出家の和田勉が監督を務める映画「完全なる飼育」がクランクアップした。平成元年の初監督作品「ハリマオ」から十年ぶり。竹中直人、小島聖をはじめ、渡辺えり子、石井苗子、北村一輝、泉谷しげる、塚本晋也ら個性派キャストが顔をそろえている。
監督は演出家・和田勉/来年1月下旬公開
高校生のクニコ(小島)がランニングの最中、中年の営業マン・岩園(竹中)に誘拐された。岩園は大胆にも自分のアパートに連れ込み、クニコに言う。「あなたを誘拐した理由はひとつ。僕は完全な愛が欲しい。僕はこれからあなたを飼育します。心と体が完全に結ばれるまで」。クニコは抵抗するが、手足を縛られて自由がきかない。こうしてクニコの監禁生活が始まるのだが…。
台本では密室で岩園に“飼育”されるクニコが心身ともに変わっていくようすが描かれており、肉体的なからみのシーンが多い。
小島は「台本を読んで『えっ?』と思いましたが、拉致(らち)されて変わっていく高校生をうまくやったら面白いだろうなと興味がわきました。竹中さんとはチャンスがあれば共演したいと思っていましたので、これはもうやるしかないだろうと(笑)」。
また、「いまはやっと終わったという実感しかありませんが、温かい共演者とスタッフに支えられてできたと思っています。自分の中では大きな決心でしたし、セックスシーンだけを売り物にする映画とは思っていません。クニコが岩園に徐々にひかれていくようすが出ていれば」とも。
ぬれ場のシーンは主に竹中のリードで動きが決まったという。竹中は「おかしかったですよ。ぬれ場がかなり多かったので監督は照れちゃうし。小島さんと、『ここで手をあげて』なんてふたりでやってるの」と笑わせつつ、「クニコと岩園のドラマチックな気持ちのぶつかりあいというより、シリアスな中でふざけたような不思議なバランスになっていれば面白いですね」。
一方、十年ぶりにメガホンをとった和田監督は「最初にテーマがあるのではなく、まずは役者ありき」という考えのもち主。「ぼくは好みが激しくてね。竹中さんは本当の意味での役者だし、小島さんの魅力は度胸や美しさとは別にひとつのタイプにおさまらないところ。過激な役者で過激なドラマを作りたかった」という。
和田監督は「一生懸命に生きれば生きるほど結果はうまくいかず、立場を変えれば被害者が加害者にもなりえる。そんな人間たちが手にしたものは何か。六畳一間のドラマで、いくらでも暗くできるけど明るくするのがぼくのドラマ。ぬれ場は形のひとつで問題はそれ以外のところ。肉体と精神の格闘技、精神のアクションドラマにしたい」と話していた。
99年1月下旬、東京・テアトル新宿ほかで公開。
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