タレント候補乱立のなぜ?

 10月20日投票となった総選挙が、女優、元歌手…と都市部の浮動票を狙って空前のタレント候補ラッシュとなっている。一時、ささやかれていた元人気キャスターの桜井よしこさん(50)=写真=の出馬は「完全に消えた」との見方が強いが、それにしても、なぜ、タレントなのか。

 今や選挙の「常連候補」となった桜井さん。その都度、「私には政治家は合いませんから」と、例のおっとり口調で出馬を否定してきた。ところが、今年3月、日本テレビ系「きょうの出来事」を降板したことで、「いよいよ出馬」と取り沙汰され、「新進党から東京7区(渋谷・中野区)で出馬する」と具体的な選挙区まで一時、噂された。

 永田町関係者は声をひそめて「新進党のタレント候補者は、知名度だけで信頼度に欠ける。そこで、桜井さんを担ぎ出そうという動きがあった。桜井さんは長年、薬害エイズ問題を追求し、社会問題にまで発展させた功労者。新進党から自民党へ復党した高橋一郎氏の後任で東京7区から出馬する、というのがウワサ」と打ち明ける。

 もっとも、桜井さんのマネジメントを行っている「アセント」では今回の出馬説を「10月はアメリカの大統領選の取材で日本にいない。スケジュール的にも無理です」と否定。別の関係者も「新進党の7区は都議が決まり、桜井さんの出馬は消えました。なんでも、桜井さんがかつて新進党の有力組織・創価学会を批判したことがあるようで、それが要因のようです」。

 それにしても、今回の総選挙は史上空前のタレント候補ラッシュだ。自民党では元ライト級世界王者でタレントのガッツ石松氏(47)は東京9区(練馬区南西部)から出馬。すでに、活動資金捻出のため自宅を担保に1億円近い借金をしているという。大村崑夫人の岡村瑶子さん(59)は大阪8区(豊中市)で出馬する。

 一方、新進党からは内山田洋とクールファイブも元メンバー、宮本悦朗氏(48)が千葉7区(松戸市の一部など)に名乗りを上げた。公明党候補の応援演説には必ず顔を出す、という熱意が買われ、同党に推薦された。同様に「学会系」では女優・沢たまき(59)が東京12区(北区、足立区西部)から立候補。他にもワイドショーのコメンティターとして活躍中の松浪健四郎専大教授(49)も大阪19区(貝塚、東佐野、東南市など)から出馬。さらに、サッチーことヤクルト野村監督夫人、沙知代さん(64)も東京5区(目黒、世田谷区南東部)で出馬する「事態」にまで発展。元中日の投手、三沢淳氏(43)は愛知4区(瑞穂、港、南区)で。

 タレントラッシュの背景について、政治評論家の浅川博忠氏は「小選挙区の導入で選挙区が増えたことが大きな要因。このため、新進党をはじめ、どの政党も候補者が不足に悩まされている。そこで、実績は問わず、浮動票の多い都市部を中心にタレントをどんどん送り込んだんでしょう」
 そのうえで、「青島幸男さんと横山ノックさんの知事選は有権者の間でも『やり過ぎだった』という反省がある。参院を見ても全く仕事をしないタレント議員が多すぎる。今回の候補者はみなタレントとして『峠を越えた』人ばかり。どの政党も背に腹は変えられぬ、といった窮状がアリアリで、追い風が吹くかはかなり疑問」と冷ややかだ。

 決戦の火ぶたは切って落とされたが、タレント候補の中には「知名度を過信して、『組織に頭を下げない』との理由で孤立してしまった者もいる」(関係者)。政界に第2のスポットライトを見いだそうとするタレントたちにとっては、苦しい選挙戦なのだ。

(神山 和子)


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