NHKの雑学クイズ番組『チコちゃんに叱られる!』が人気だ。番組の目玉は5歳児のチコちゃんが「ボーッと生きてんじゃねえよ!」と大人を叱る場面。なぜウケているのか。人形研究者の菊地浩平氏は「チコちゃんには『受け取り方の自由』という番組のスタンスが現れている。自由度が高いから、“叱られる”とわかっていても、幅広い視聴者をつかんでいるのだろう」と分析する――。
『チコちゃんに叱られる!』公式ホームページより

2018年を代表した番組『チコちゃんに叱られる!』

NHK総合で2018年4月から、毎週金曜日19時57分(再放送は翌土曜日8時15分)にレギュラー放送されている雑学クイズ番組『チコちゃんに叱られる!』が話題だ。

番組の大まかな流れは、まず5歳児のチコちゃん(着ぐるみで、顔面にCGが使用されている。声はお笑い芸人の木村祐一がボイスチェンジャーを駆使して担当)が素朴だが厄介な疑問を投げかけ、それにナインティナインの岡村隆史らが答えようとする。

思いがけず正解してしまう場合もあるが、大抵は不正解。すると大人たちをチコちゃんが「ボーッと生きてんじゃねえよ!」と叱る。続いてチコちゃんから意外な答えが示され、その裏付けとして専門家の見解や、取材に基づいた再現VTRなどが流れるというものだ。

チコちゃんの決めぜりふ「ボーッと生きてんじゃねえよ!」が流行語大賞にノミネートされ、紅白歌合戦への出場も果たしたことから、2018年を代表する番組のひとつといえるだろう。

ほぼ毎回「諸説ある」と注が入る

この『チコちゃんに叱られる!』を毎週見ていて個人的に最も興味深いのは、クイズ番組とうたわれているものの、ひとつの正解にたどり着くことだけが目的とされていない点だ。

専門家の見解や取材の成果を踏まえつつも、疑問に対する答えが必ずしもひとつではないことを強調するかのように、ほぼ毎回「諸説ある」と注が入る。後述するように答えが「わからなかった」と明言される回まである。一問一答のいわゆる「クイズ番組」よりも幅を持たせた作りといえるだろう。

しかし、『ガッテン!』や、『ホンマでっか!?TV』だってアプローチや見せ方は異なるが、似たようなスタンスの番組であることも事実だ。よってその点だけを番組の真価とするのは難しい。

では何がこの番組の独自性を作り上げていて、ここまで注目されるに至ったのか。わたしは人形研究者なので、こうした番組のスタンスと「人形」がいかに深く関わっているかを考えたい。そうすることで、番組の人気の理由、すなわち多くの人たちが「なぜチコちゃんに叱られたいのか」を明らかにできるはずである。