外山恒一&藤村修の時事放談2019.12.12「進次郎を総理にしてサミットから追放されよう!」(その8)

 【外山恒一の「note」コンテンツ一覧】

 「その7」から続いて、これで完結〉
 〈全体の構成は「もくじ」参照〉

 かれこれ4年ほど半年おきに続けている、福岡在住の同い年の天皇主義右翼(でもインテリ!)・藤村修氏との〝時事放談〟シリーズである。
 2019年12月12日におこなわれた。
 年末だし〝今年を振り返る〟的な内容だが、過去の対談を今読んでも滅法面白いように、べつに2030年ぐらいになってから読んでも引き続き面白いだろう。

 第8部は原稿用紙20枚分、うち冒頭6枚分は無料でも読める。ただし料金設定(原稿用紙1枚分10円)にはその6枚分も含む。

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 ジャーナリストの質は喫煙量に比例する

藤村 ……そういえば大学入試での、英語の民間試験の導入というのは中止になったよね。安倍内閣、ちょっと危うしなんじゃないかな。
 これまでの安倍内閣は、どんな批判があろうとも、手をつけ始めたことは全部やり通してきたでしょ。それが安倍内閣の強みの1つでもあった。反対意見なんかそもそも聞く気がないっていう。それが今回はやり通せなくて、意外ともう安倍内閣はパワーが落ちてるのかもしれない。
 これで支持率がもしガタッと下がるようなことがあれば、いよいよヤバいような気もする。これまでにも一瞬だけど、小池百合子が出てきた時にヤバい局面はあったもんね。しかし一方で、あんまりピンチ感もない。

外山 ライバルがいないからなあ。

藤村 たぶんデモの盛り上がりなんかどーでもよくて、問題は一般の支持率でしょう。あとは株価。

外山 何度か云ったけど、支持率さえ思いっきり下がれば、どうせ自民党の中から誰か出てきて、目立ち始めるだろうし。

藤村 安倍内閣の不祥事なんか、今まだホットなものだけでも、いっぱいあるんだもん。「桜を見る会」だけじゃなくて、改正入管法で外国人がますます多く日本に在留できるようになったけど、その在留資格をもらえるように斡旋してた厚労省の政務官(自民党衆院議員・上野宏史)がいて、バレて辞任したという件(8月28日)もあったでしょ。
 さっきも話に出た、メロンとか配って大臣を辞めた人もいるし、その前後に他にも誰かいた気がする(参院選での選挙違反疑惑を報じられた河井克行法相が10月31日に辞任)。不祥事のオンパレードなんだよ。

外山 あれだけ評判の悪かった森首相って、何か不祥事があったんだっけ?

藤村 うーん……とくになかったよね(笑)。

外山 〝神の国〟発言ぐらいでしょ? 他にも何かあったとしても、ここまでヒドくはなかったはずだ(笑)。

藤村 やっぱりマスコミが原因だという気がしてきた。猪瀬や舛添の件と比較しても……。

外山 結局マスコミが騒げば世論は動くんだよね。世論が動いて自民党の支持率がガタ落ちになれば自民党の中で権力闘争が活性化して、その中から誰かが目立ち始める。もともと自民党の中に安倍ちゃんに取って代わりうる人材がいるかどうか、野党の中にはどうか、そんなことは実は何の関係もない。

藤村 しかしそのマスコミを、安倍内閣はがっちり押さえてるからさ。

外山 そういうことでしかないんだな。

藤村 がっちり押さえてると云っても、それはべつに安倍ちゃんが強権を発動したとかではなく、安倍ちゃんはただマスコミの幹部とよく一緒に寿司を食ってるだけ(笑)。
 麻生さんがなぜ記者たちにあんなナメくさった態度をとれるかといえば、記者たちは大半まだ20代とかだからね。その人たちがいくらやる気になったところで……。

外山 その間に安倍ちゃんが社長と寿司を食ってる(笑)。

藤村 そりゃあ記者たちは逆らえないでしょう。しかも日本のマスコミ人は、昔の〝羽織ゴロ〟(明治の草創期の新聞記者などを形容する言葉。〝立派な身なりをしたゴロツキ〟)の時代と違って今は一流大学を出たエリートたちだから、虚弱なんだ。

外山 藤村君がよく云ってるアレだね。記者たちが詰めてる部屋の灰皿の吸い殻の量に反比例して、ジャーナリズムの質が下がる。

藤村 『美味しんぼ』を見てもよく分かるよ。最初のほうの巻の〝東西新聞社〟はタバコの煙がモクモクしてたじゃん。

外山 今は灰皿自体ないし、そろそろ喫煙者は採用してもらえなくなるだろうから、マスゴミも極まれりだ。


 ネトウヨの大量発生は左翼の自業自得

藤村 ……あと運動界隈の今年の話題といえば、『主戦場』っていうドキュメンタリー映画があったでしょ。

外山 みんな何かあれこれ云ってたね。何のテーマの映画だっけ?

藤村 従軍慰安婦。で、バカなネトウヨがいっぱい出てくるわけよ。その云いぶんのおかしさをルポルタージュ的にまとめてるんだけどさ。オレとしては、彼らがバカなネトウヨであるということは百も承知の上で、ではなぜそんなバカなネトウヨが蔓延ってきたのかという問題はちゃんと考えなきゃいけないと思う。
 例えば南京大虐殺の問題にしても、それはまあ〝大虐殺〟はあったでしょう。しかしその数を最初は〝30万人〟だと云ってたじゃん。中国側がそう云ってて、本多勝一の『中国の旅』でもそれをそのまま伝えてた。
 その後、いろんな人がその数字を検証して、それほど多くはなかったという説が優勢になってくると、左派の連中は「数が問題ではない」と云い出す。オレもそのとおりだと思う。数は問題ではないよ。数が30万人ではなく4万人ぐらいだったとしても、大虐殺であることに変わりはない。
 しかし、実際のところどれぐらいの数の人が虐殺されたのかを実証的に研究して、中国側の云う〝30万人〟という数を疑うだけで、かつては左翼の連中から〝歴史修正主義者〟呼ばわりされたでしょ。まあ当時はまだ〝歴史修正主義〟という言葉はなかったと思うけど、全否定するようなレッテルを貼られて攻撃されるという風潮は間違いなくあった。

外山 それがなかったという左派がいるとすれば、そいつこそ悪しき歴史修正主義者だね。

藤村 とにかく〝30万人〟より少なく云う奴は反動で、御用学者で、侵略戦争への反省がない奴だと決めつけられてたわけだ。だけどそれから何十年も経って研究が進んでみると、やっぱり〝30万人〟というのはどうも間違いだったということがはっきりしてくる。
 そうなると、かつて〝30万人〟だと云い張ってた連中は、今度は「数が問題ではない」とか云い出す。連中はこういう論点ずらしを平気でやるから……。

外山 反感を買って当然だよな。

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