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習近平が「中国人嫌い」な“あの国”を訪問した意図とは?

 中国人だと思って殴っていたら日本人だとわかり…… 「ごめんなさい」  そんな暴行事件が頻発している国、モンゴル。
モンゴルの草原

モンゴル国の遊牧民の屯営地。地続きの中国・内モンゴル自治区では、もはや観光地以外では見られなくなった光景である

 街なかの一般市民の多くも、スーパーや商店などで大声で話していたり、店員ともめている中国人を見かけると「またホジャ(中国人を見下した呼び方のモンゴル語)が騒いでるよ」と舌打ちすることしばしば。  外務省海外安全ホームページにも、「歴史的背景から中国人に対するモンゴル人一般の潜在的な感情には複雑なものがあります。街頭で日本人が中国人と間違えられ、モンゴル人に殴られる事件等のトラブルが時折発生しています」と記して、注意を喚起している。  内モンゴル出身のモンゴル人で現在、静岡大学教授の楊海英氏はこう解説する。 「モンゴル人あるいは国家としてのモンゴル国は、心情的には親ロ反中です。社会主義国家時代のソ連には問題があったと考えてはいても、モンゴル人は個々のロシア人自体は好意的にとらえています。反対に、中国は国も個人も大嫌い。ロシア人は素朴ですが、中国人は笑顔を見せる裏で何を考えているかわからないというのが、モンゴル人の印象なのです」  そんなモンゴル国を、中国の習近平国家主席が8月21日から訪問、首都ウランバートルでエルベグドルジ大統領と会談した。中国の国家主席によるモンゴル公式訪問は、2003年に胡錦濤氏が訪れて以来11年ぶりである。  これに先駆けて日本とモンゴルの間では、昨年3月に安倍晋三首相がモンゴルを訪問。今年7月にはエルベグドルジ大統領が訪日。両国が経済連携協定(EPA)交渉で大筋合意している。また、モンゴル軍とアメリカ軍が共催する「カーン・クエスト」(khan quest)と名付けられた軍事演習が、毎年ウランバートル近郊で行われているなど、モンゴルは日本や米国とも関係を強化している。  そのため、中国側には習氏訪問によって、こうした動きをけん制する狙いがあるともみられている。  モンゴルでの会見で習氏は、同国側に資源を求めて進出を続ける中国への警戒感が強いことを受けて「モンゴルの領土完全性を尊重する」と表明した。  一方、モンゴル政府も、習近平氏を迎えるために空港から市街への道路を整備して臨んだほど。エルベグドルジ氏は習氏の訪問を「歴史的だ」と評価した。  しかし、前出・楊海英氏はこう懸念する。 「利益追求のためには他者を平気で裏切るという思考形態は中国人(漢人)の人格的問題、あるいは周囲をすべて見下す『中華』という思想の特徴です。暴力性だけでなく、したたかさも併せ持っているのでやっかいな国なのです。 モンゴル人の私は、幼いころから草原に住んでいました。1960代初頭の内モンゴル自治区は牧野が果てしなく広がり、ヒツジやウマが放たれたのどかな土地でした。十数キロ離れた場所に、植民してきた漢人が数家族住んでいましたが、彼らはいつもモンゴル人とはまったく異なる行動を取っていたのが印象に残っています。例えば、燃料です。 モンゴル人は主に乾燥した牛糞を燃やし、冬になればわずかに枯れた灌木類を拾うこともあります。しかし、中国の漢人たちは季節と関係なく、手当たり次第に灌木を切っていくのです。しかも、必ずと言っていいほどモンゴル人の居住地域内に入り込んで伐採する。 このような“小さな利益”を貪る漢人たちを、モンゴル人は寛容に放置していましたが、ふと気がつけば、自分たちの草原内にところどころ砂漠ができていました。降雨量の少ない北・中央アジアでは、植皮を失った草原はたちまち砂漠化してしまうので、モンゴル人は大地に鋤や鍬を入れる行為を忌み嫌います。そのため、モンゴル人は漢人を『草原に疱瘡をもたらす植民者』と呼んできました。 1966年、毛沢東を指導者とする中国政府が推進した文化大革命が勃発すると、中国の漢人たちはモンゴル人に対し、真っ赤に焼いた鉄棒を肛門に入れる、鉄釘を頭に打ち込むなどの拷問や殺戮を重ね、モンゴル人女性のズボンを脱がせて、粗麻縄と呼ぶ縄でその陰部をノコギリのように繰り返し引く、妊娠中の女性の胎内に手を入れて、その胎児を子宮から引っ張り出す、などの凄惨な性的暴行を加えました。当時、内モンゴル自治区には150万人弱のモンゴル人が住んでいましたが、内モンゴル自治区のジャーナリストや研究者たちによれば、モンゴル人犠牲者の数は30万人に達すると記録されています。 私の経験は決して特殊な事例ではありません。その後も、内モンゴル自治区ではモンゴル人の人口がたったの250万人にとどまり、あとから入植してきた中国人はいつの間にか3000万人にも膨れあがり、その地位が完全に逆転してしまいました。中国人による植民地開拓のプロセスは基本的に同じです」
横暴な中国人に轢き殺されるモンゴル人の家畜

横暴な中国人に轢き殺されるモンゴル人の家畜

 モンゴル紙に寄稿し、「モンゴルの発展を支援するためにできることは何でもする。中国は、お互いを結びつける鉄道や道路の建設、鉱山開発で両国が協力を推し進められることを期待している」と表明したという習主席だが、ウランバートルの一般市民は、習近平の訪蒙を「別に気にもしてない」(公務員・38歳・女性)、「道路ができて渋滞が緩和されたのはよかった」(ホテル・34歳・男性)など、静観しているようだ。  来週にはロシアのプーチン大統領もモンゴルを訪問する予定という。中国とロシアという大国に挟まれたモンゴル国の外交は他人事ではない、と楊氏はいう 「もし、五島列島や奄美諸島などに中国人の漁民が頻繁に来るようになり、その後に『難破した同胞を助けにきました』と中国海軍の軍艦が現れたら、それはまさに19世紀以降に満洲、モンゴル、新疆へと、彼らが領土拡張してきた方法と同じです。人のいい日本人たちは、2012年7月、五島列島に中国漁船が「避難」してきたとき、彼らの食事を心配して弁当を準備したそうです。 しかし、彼らが弁当を用意している隙に、軍艦がやってくる可能性がないとは言えないのです。中国および中国人は、そういう国であり民族であるということを、日本人はもっと認識しなければなりません。前兆は表れつつあります。2014年は日清戦争勃発120周年にあたります。日清戦争も、当時は最新鋭の軍艦を擁していた清国が何度も日本に威圧的な態度を取り、そして朝鮮半島でも日本の影響力を排除しようとしたことが原因でした。 東シナ海で海上保安庁の艦船に体当たりし、東アジア諸国から日本製品を締め出そうとする今の中国の政治的な目論見は、120年前となんら変わりません。日本人は先の戦争を経験して大きく変わりましたが、隣人の本質が変わらないところに、悲劇が潜んでいるのです」  隣に中国という国が存続している以上、日本人はかの国との付き合い方を常に工夫しなければならない運命にある。中国と長きに渡り地続きで対峙してきた“モンゴル的目線”で捉えた「対中論」に、日中の実現不可能なフィクションとしての「友好」ではなく、“普通の関係”を築く鍵がありそうだ。 <取材・文/日刊SPA!取材班> ●中国籍を拒絶した亡国の知識人・楊海英が警告! 『狂暴国家 中国の正体』8月30日発売(扶桑社 定価760円+税)
狂暴国家 中国の正体

虐殺、レイプ、強制移住……日本を脅かす「民族絶滅」政策

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