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Jクラブ参入、名門の刷新、ポジション変更に新チーム結成。どうぎんカーリングクラシック2018展望

竹田聡一郎スポーツライター
2月には平昌五輪を現地観戦した吉村紗也香。「悔しさはあったけれど行って良かった」

 8月2日にどうぎんカーリングクラシック2018が開幕した。同3日からは一次リーグが始まる。

 カーリングは五輪イヤーの翌シーズンに大幅な選手の入れ替えや移動が起こる。この平昌五輪後も例外ではない。

 まず男子だが、大きなトピックとしてはJクラブの参入だろう。日本選手権準優勝のチーム北海道(4REAL)がチームごと移管する形で、北海道コンサドーレ札幌カーリングチーム(Abe)として今大会から正式に再スタートを切る。これまでの阿部晋也(コンサドーレ北海道スポーツクラブ所属)、松村雄太(永山運送)、谷田康真(北海道クボタ)、相田晃輔(北見工大)のメンバーに加え、平昌五輪にSC軽井沢クラブの一員として出場した清水徹郎(シズナイロゴス)が加入した。

 阿部は「新しい体制で迎えるので、幸先のいいスタートを切りたい。結果にこだわって戦ってゆく」と、まずは一つ目のトロフィーを狙う。

 そのチーム北海道を破って日本選手権を制したチームIWAIは今回、メンバーの青木豪が新入生として、宿谷涼太郎が大学院生として、それぞれ進学した札幌国際大学(Iwai)としてプレーする。荻原功暉や鎌田渓などジュニア世代のトップカーラーがIWAIの岩井真幸を迎え、どのようなケミストリーを起こすか注目だ。

 清水同様、軽井沢から新天地を求めたのがチーム平田の平田洸介だ。北見工大の現役学生とOB、さらに札幌学院大学OBで組まれた次世代チームだが「泥臭く最後まで諦めないプレーで食らいついていきたい。目標はもちろん優勝です」と一気に名を上げようと意気込む。

 この他にも韓国トップチームのひとつチームパク(Park)、日本選手権常連の軽井沢WILE(Ogihara)やアイスクライマー(Ikezaki)などが参加し、優勝戦線は予想が困難だ。短期決戦だけにジュニア世代で結果が出始めた札幌学院大学(Shimizuno)やCheckmate(Tsuruga)にも十分にチャンスがある。まずは初戦でどこまでアイスコンディションを把握できるかが鍵になってくるだろう。

 女子はホームの北海道銀行フォルティウス(Yoshimura)に大きな動きがあった。

 2011年のチーム結成以来、看板選手として日本選手権制覇、世界選手権6位入賞、ソチ五輪5位入賞の原動力となってきた小笠原歩が昨年限りで戦列を離れたのだ。今季は、船山弓枝ー近江谷杏菜ー小野寺佳歩、そして不動のスキップの後釜に座るのは吉村紗也香だ。経験豊富な船山がリードに入ることで大崩れはせず、早いウェイトを持ちコントロールテイクも苦にしない器用な近江谷と小野寺のコンビは多彩なセットアップを可能にし、強いスイープも備わっている。

 新スキップの吉村は「勝負を決める一投を投げるので、少なからずプレッシャーはあると思う」そう覚悟しながらも「それでも決め切るスキップでありたい」と言い切った。刷新を決断した名門の進撃が、ここ札幌から再び始まる。

 17年は優勝、今年も3位と近年の日本選手権で安定した成績を残している中部電力(Matsumura)にも、主将として長らくチームを支えた清水絵美がマネージャーに就任した関係もあり、ポジション変更があった。石郷岡葉純こそ不動のリードだが、最年少の中嶋星奈がセカンドスキップに抜擢された。サードに松村千秋、フォースに3月のミックスダブルスで高いパフォーマンスを見せた北澤育恵が入った。先月のアドヴィックス杯では男子チームを破ってプレーオフ進出を果たすなど、清水は「いい感触でプレーできているゲームも増えてきた」と一定の手応えを得ている。ポテンシャルは十分だ。北京に向けてさらなる飛躍が期待される。

 各チーム、変化がある一方でいい意味で変わらずに強化を重ねているのが日本選手権女王のチーム富士急(Koana)だ。3月にはカナダ・ノースベイの世界選手権に参戦し5つの白星を重ねても、彼女らに芽生えたのは「練習しなくちゃ、と思った」という飢えや危機感、向上心だ。

「本当に強いチームになるために、基礎からまたしっかり積み上げていく」

 小穴がそう今季の抱負を語る。JAPANのユニホームに再び袖を通すためにリスタートにかける思いは強い。

 上記の日本選手権メダルチームに立ちはだかるのが、韓国選手権2年連続準優勝で昨大会でも準優勝と結果を残したKimと、PACCで2度金メダルに輝くなど実績と経験が豊富なGimの、両韓国勢だ。どちらも札幌では何度も合宿を組んでいるため手強いが、大会史上初の日本勢決勝の実現なるか。

 また、今年からこの大会は正式にワールドカーリングツアーの1タイトルに認定された。5ロック制度(※)が採用され、結果は公式HPでスコア速報がアップされる。優勝チームにはツアーランキングポイントが加算される。

 入場料は各日500円だが、現地観戦できないファンのために、札幌カーリング協会は昨年に続き週末の試合を中心にYoutubeでライブ配信することを決定した。解説には石崎琴美さんが起用されるなど、こちらも大きな楽しみだ。

 北京五輪へ向けてまず好スタートを切るのはどのチームなのかじっくり見極めたい。

(※)「5ロック」

カーリングには両軍リードの4投がハウスにかかっていない場合、つまりガードストーンをテイクしてはいけない「フリーガードゾーンルール」があるが、これがカナダを中心に改良され、今季から日本でも本格導入される。これまでの4投に加え、先攻チームのセカンドの1投目、各エンドの5投までガードストーンのテイクが禁止になる。これが“5ロック”と呼ばれる所以だが、ハウスに石が残りやすくなり、複数得点、あるいはスティールの契機が大幅に増えることが予想される。

スポーツライター

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。 カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

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