• 『オダイバ!!超次元音楽祭』企画・演出のフジテレビ浜崎綾氏

――ただ、放送決定を告知するリリース文には「世代間の情報の断絶が想像以上であるということ」とも書かれていましたね。

実は私がこの番組について動き始めたのは2018年の頭ぐらいで、私としては本当は2019年の春ぐらいには実現したかったんです。でも、やっぱり最終的にジャッジをする編成や50代くらいの管理職の方にはこういった名前が羅列された企画書を見ても「水樹奈々は分かるけれど、ほかは1人も知らないな……」みたいになってしまって。「ちょっとまだ早いんじゃない?」と言われてしまったりもしたんです。でも、私は「絶対他の局が先にやっちゃいますよ!」って思っていたので、この1~2年はもどかしさもありながら社内調整に奔走していました。

――そんな中で、何が決め手で実現に至ったのでしょうか?

よく分からないまま熱意に押された方もたぶんいたと思うんですけれど(笑)、1人2人、小学校高学年とか中学生ぐらいのお子さんがいる人が「子どもが急にAqoursにハマった」とか言っていたり、あとそういう方から「子どもが急にまふまふくんとか天月くんとか言い出したけど、人気あるの?」と聞かれたりもして。「ドーム埋めてますよ! この企画では、そういう人たちを出したいんです!」って答えたら「俺はよく分からないけど、うちの子もすごい好きだって言ってるし、人気あるならやってみるか」と言ってもらえたり……そういったことのおかげでした。

それと、逆に熱量を感じてくれた社員がいろいろな部署にちゃんといたのもうれしかったです。今回取材していただいているのも、広報の方が「これはマイナビさんに取材してもらわねば!」と動いてくれたからなんです(笑)

――『FNS歌謡祭』のときはそういうハードルをどう乗り越えられていたんですか?

『FNS歌謡祭』は私が全部曲目やアーティスト、コラボを決めて、構成を作ってプロデューサーたちにプレゼンしていくんですけれど、最近は80曲ぐらい並んでいる中に1曲くらい分からない曲があっても「よく分からないけど、浜崎が入れてるならいいか」と、そのままスルーしてもらえるようになりました(笑)。だから去年も「『ポプテピピック』? 何これ?」みたいに言われたんですけれど、「いや、大丈夫ですから! 絶対この4時間半でいちばんバズるから、お願いだからこの2分のことはスルーしてください!」って押し通して(笑)

――ポプ子やピピ美まで出ていましたし(笑)

はい。あれも徹底的にバズらせようと思って、「FNS歌謡祭と言えば円卓だよな……めちゃくちゃいい曲を、円卓で聴ポプ子とピピ美が聴いているのは面白いんじゃない?」と、コブクロの「蕾」でポプ子とピピ美を(画面で)抜くことに決めたんです(笑)

――あれは、あらかじめ決まってたんですか!

全部計算していました。上坂さんの歌唱中に、蒼井翔太さんがあのタイミングでLEDに映って「出ていないのに、出た」感じになったりしたのも。

■“テレビに出た”以上の瞬間が作れた

――ちなみに、2019年の『FNS歌謡祭』の反響はいかがでしたか?

そのLEDの蒼井翔太さんがバズった流れから本物の蒼井翔太さんだな! と。やはり反響がすごくてTwitterの世界トレンドに入った上に、ウェブサイトもサーバーダウンしたと聞いて。

――今回は、どんな仕掛けをされたんですか?

やっぱりまず、出ていただくなら“蒼井翔太”という存在を知らない人にも引っかかってほしいという意味で、倖田來未さんとの「愛のうた」をやろうと決めていたんです。蒼井翔太さんは倖田さんの曲を歌って歌手を志した方だし、私は昔から倖田さんとは親しくさせていただいているので、お願いしやすいと思いました。「今、どうしてもこの方とコラボしていただきたいんです」と蒼井さんの動画も添えてメールを送ったら、「そんなに言うんやったら間違いないんやろうね」と引き受けてくださったんです。

歌唱後には、袖で蒼井さんが号泣して倖田さんと抱き合っていたと聞きまして。ただ“テレビに出た”だけじゃなくて、歌手人生の中で憧れの人と共演を果たした蒼井さんにとって、大事な何かになる一瞬を作れたこともすごくうれしかったですね。

――蒼井さんはもう1曲、水樹奈々さんとの「METANOIA」もありました。

これは“アニソンファンが喜ぶコラボ”ということで、女性キーで歌える蒼井さんの高音を生かして「とんでもないハイトーンで歌う人がいるんだな!」と思えるポイントを作りたかったんです。しかも、ただアニソンを歌っていただいたわけではなくて、気づく人は「『(戦姫絶唱)シンフォギア』コラボじゃん!」って気づく。そういう二段構えでした。