失神:医師が気にする危ない症状|症状辞典

失神

受診の目安

夜間・休日を問わず受診

急ぎの受診、状況によっては救急車が必要です。
どうしても受診できない場合でも、翌朝には受診しましょう。

  • 意識を失い突然ばたんと倒れた(その後回復した場合も含む)
  • 呼んだり叩いたりしても目覚めない

診療時間内に受診

翌日〜近日中の受診を検討しましょう。

  • 失神しそうになる、意識が遠のく事がたびたびある
  • 気を失う事がたびたびあるが、すぐに回復するため受診していない

場合によって受診を検討

気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。

  • 排便・排尿後に一時的に意識が遠のく感じがしたがすぐによくなり、その後繰り返さない

植田救急クリニック

加藤 之紀 先生【監修】

一時的に意識を消失し、その後完全に意識が戻ることを「失神」といいます。

  • 長時間の立ち仕事の後、めまいがしてそのまま意識がなくなった
  • 立ち上がったときにふらっとして、そのまま倒れてしまった
  • 何の前触れもなく、突然意識がなくなって倒れた

これらはいずれも失神の症状ですが、場合によっては命にかかわることもあるため原因を調べることが重要です。

一般的に「失神」と言われるものは別名「一過性意識消失発作」とも呼ばれ、文字の通り一時的に意識を失うことを言います。失神が起こるのは通常、数十秒~数分間と比較的短い時間であり、その後は自然に意識が戻り何らかの後遺症が残ることはありません。しかし、以下のような場合には注意が必要です。

  • 意識は取り戻したが通常通りに活動ができない、様子がおかしい
  • しばらく呼んだり強く叩いたりしても意識を取り戻さない

このような場合には脳などに重篤な病気が起こっている危険性があるため、救急要請を含めてすぐに受診しましょう。

短時間で意識が回復する失神の多くは、脳に送られる血液や酸素、エネルギー源となるブドウ糖などが一時的に不足して起こります。日常的にも比較的起こる可能性のある失神には、以下のようなものがあります。

神経調節性失神(反射性失神)

暑さ、痛み、ストレス、といった何らかの刺激をきっかけに迷走神経(副交感神経の一種)の働きが活発になり、心拍数の低下が起こった結果として脳への血流が低下して引き起こされる失神の総称です。神経調節性失神の中には、主に次のようなものがあります。

神経調節性失神
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血管迷走神経性失神

失神の中でも多くの割合を占めている種類で、意識を失う直前に「眠気を催す」「気分が悪い」「視界がぼやける」「頭が痛くなる」といった前駆症状が見られることが特徴です。長時間の立ち仕事の後など、心身に大きなストレスがかかっているときに起こることが多いようです。

状況失神

せきをした後、食べ物を飲み込んだ後、食事をした後、トイレに立った後など、特定の動作が引き金となって起こる失神のことです。

神経調節性失神はそれ自体が命にかかわることはなく、意識が回復すれば後に特別な症状は残らないとされています。ただし、日常的に繰り返す可能性があるため注意が必要です。

起立性低血圧症

寝転がっている状態から立ち上がるときなど体勢を大きく変えるときには、一時的に血圧の低下が生じます。このとき通常はさまざまな神経のはたらきにより血圧は一定に保たれますが、神経がきちんとはたらいてくれなければそのまま急激な血圧低下が起こり、失神につながることがあります。

起立性低血圧は、起き上がった直後、運動後、食後などに起こりやすいとされています。多くのケースでは命に別状はありませんが、転倒により頭を強くぶつけるなどけがを負う可能性もあります。

前述の神経調節性失神が原因でも起立性低血圧はおこりますが、脱水や貧血などでも起立性低血圧はおこります。急激な貧血の原因となる、便が黒いなどの症状がなかったかなどが大切です。

起立性低血圧症
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洞不全症候群

心臓の拍動は心臓に電気が伝わることで起こるため、心拍数は心臓に伝わる電気信号に左右されます。電気信号がつくられなくなったり伝わりにくくなったりすることで脈が極めて遅くなる状態を「洞不全症候群」と言います。

洞不全症候群
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高度房室ブロック

電気信号が伝わる道の途中で電気が途絶えたりしてしまうことで、電気信号がうまく伝わらない状態を“房室ブロック”と言います。そして、何の前触れもなく突然に、数秒間にわたって心室への電気信号が途絶えることを“高度房室ブロック”と呼びます。高度房室ブロックでは突然死の危険性もあり、ペースメーカーによる治療が必要です。

精神疾患

失神には迷走神経(副交感神経)の働きが深く関係しています。副交感神経を含む自律神経の働きを乱す要因には心的なストレスもあるため、パニック障害、うつ病統合失調症などの精神疾患が引き金となって失神が起こるケースもあります。失神が精神疾患による場合、不安感や過呼吸などを伴うことがあるのも特徴です。 

うつ病
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統合失調症
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薬によるもの

頻度としてはあまり高くありませんが、失神の中には血管拡張薬、利尿薬、抗うつ薬などが原因となって起こる薬剤性のものもあります。降圧剤や抗不整脈薬を服用し始めたばかりなど心当たりがある場合は、薬を処方してもらった病院で相談してみてください。

ここまでさまざまな失神をご紹介してきましたが、自分の症状がどれにあたるのか、自分で判断するのは容易ではありません。場合によっては命にかかわることもあるので、一度でも失神の経験がある方は医療機関の受診を検討しましょう。心臓に持病がある、不整脈を指摘された事がある場合、失神を何度もくり返している、機械の操作や運転をする仕事など、失神による危険が高い仕事をしている方は早めの受診をおすすめします。

失神は原因によって専門の診療科が異なるためまずは内科を受診し、原因の目安や専門科目を受診する必要があるかどうかなどを相談しましょう。その際、いつどのような状況で失神したか、これまでの失神の頻度など、情報を細かく医師に伝えることがポイントです。

原因の自己判断/自己診断は控え、早期の受診を検討しましょう。