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麻疹ワクチン接種 「本当に必要な世代」に

濱田篤郎・東京医科大学客員教授
麻疹の流行が報じられ、東京都内のクリニックでワクチン接種を受ける男性
麻疹の流行が報じられ、東京都内のクリニックでワクチン接種を受ける男性

 3月中旬、沖縄県で始まった麻疹(はしか)の流行は愛知県など全国に拡大し、国立感染症研究所によると、患者数は5月13日までに149人に増えました。今回の流行の発端となったのは、台湾からの旅行者とされており、現在の日本で、麻疹は海外からの輸入例を起点に流行する感染症になっています。

麻疹の輸出国から輸入国に

 2007年、東京などの学校を中心に麻疹の大流行があり、少なくとも1万人以上の患者が発生したと考えられています。カナダを修学旅行中だった女子高生も現地で発病し、同行していた40人以上の学生や教員が現地に足止めされるという出来事がありました。この時、日本は「麻疹の輸出国」という不名誉なレッテルを貼られてしまったのです。そこで厚生労働省は、国内から麻疹を撲滅するため、患者数の正確な把握や、麻疹ワクチンの2回接種を徹底する対策を開始します。

 この効果により国内の麻疹患者数は急速に減り、15年、世界保健機関(WHO)は日本を「麻疹排除国」に認定しました。それ以降も国内では麻疹の患者が発生していますが、いずれも海外で麻疹にかかった患者が国内で感染を拡大させるという伝播(でんぱ)様式になっています。今回の沖縄県での流行は、その典型例と言えるでしょう。

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東京医科大学客員教授

はまだ・あつお 1981年、東京慈恵会医科大学卒業。84~86年に米国Case Western Reserve大学に留学し、熱帯感染症学と渡航医学を修得する。帰国後、東京慈恵会医科大学・熱帯医学教室講師を経て、2005年9月~10年3月は労働者健康福祉機構・海外勤務健康管理センター所長代理を務めた。10年7月から東京医科大学教授、東京医科大学病院渡航者医療センター部長に就任。海外勤務者や海外旅行者の診療にあたりながら、国や東京都などの感染症対策事業に携わる。11年8月~16年7月には日本渡航医学会理事長を務めた。著書に「旅と病の三千年史」(文春新書)、「世界一病気に狙われている日本人」(講談社+α新書)、「歴史を変えた旅と病」(講談社+α文庫)、「新疫病流行記」(バジリコ)、「海外健康生活Q&A」(経団連出版)など。19年3月まで「旅と病の歴史地図」を執筆した。