民法第263条

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法学民事法民法コンメンタール民法第2編 物権 (コンメンタール民法)民法第263条

条文[編集]

共有の性質を有する入会権

第263条
共有の性質を有する入会権については、各地方の慣習に従うほか、この節の規定を適用する

解説[編集]

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ウィキペディア入会権の記事があります。
共有の性質を有する入会権、即ち、入会団体が入会地を所有する場合における入会権について定める。なお、共有の性質を有しない入会権については、地役権に従う(民法第294条(共有の性質を有しない入会権)を参照)。
ただし、実際は、共有及び地役権の規定が適用又は準用される局面は稀であり(例えば、共有は第256条により分割請求ができることが原則であり、契約を更新することで、それを抑止できるのであるが、入会林野の分割請求は無制限には認められない)、入会権者及びその利害関係者の間で長年に渡り積み重ねられた取り決め、規約、暗黙の合意等の慣習に委ねられている。

参照条文[編集]

判例[編集]

  • 所有権移転登記手続請求(最高裁判決  昭和41年11月25日)民法第263条,民訴法62条
    入会権確認の訴は固有必要的共同訴訟か
    入会権確認の訴は、入会権が共有の性質を有するかどうかを問わず、入会権者全員で提起することを要する固有必要的共同訴訟である。
  • 山林等所有権確認等請求(最高裁判例  昭和42年03月17日)
    地役の性質を有する入会権が解体消滅したと認められた事例(入会権消滅の事例)
    明治21年町村制の施行後、区の所有であつて当該区の部落民の入り会つていた入会地について、その後65年間に、部落の統制が次第に当該区会の統制に移行し、区が従前の入会地の一部を処分し、全入会地を管理して使用収益方法を定め、部落民も異議なくこの方法に従つて当該土地の使用収益をするにいたり、また従前部落の入会権行使の統制機関であつた「春寄合」は区会に対する意見具申の機関になつた等慣行の変化があつた場合には、部落民が右土地につき有していた地役の性質を有する入会権は、漸次解体して消滅したと認めるのが相当である。
  • 所有権移転登記等抹消登記手続等請求 昭和43年11月15日)民法第94条2項
    民法第94条第2項の適用または類推適用がないとされた事例
    部落民全員が、その総有に属する土地について、入会権者として登記の必要に迫られ、単に登記の便宜から、右部落民の一部の者のために売買による所有権移転登記を経由した場合には、民法第94条第2項の適用または類推適用がない。
  • 入会権確認等請求(最高裁判決 昭和48年03月13日)民法第294条,民訴法第208条
    入会権確認訴訟における入会権者の死亡と訴訟承継人
    入会権確認訴訟において、入会権者が死亡した場合には、入会慣行に従つて死亡者に代わり入会権を取得した者が、その訴訟手続を承継する。
    明治初年の官民有区分処分による官有地編入と入会権の帰すう
    従前入会権の対象となつていた土地が、明治初年の官民有区分処分によつて官有地に編入されたとしても、その入会権は、右処分によつて当然には消滅しなかつたものと解すべきである。
  • 土地並びに地上立木所有権確認請求(最高裁判決 昭和48年10月05日)民法第162条
    入会部落の総有に属する土地を買い受けた同部落の構成員と民法第177条の第三者
    入会部落の総有に属する土地の譲渡を受けた同部落の構成員は、右譲渡前にこれを時効取得した者に対する関係において、民法第177条にいう第三者にあたる。
    一筆の土地の一部の所有権時効取得と対抗要件
    一筆の土地の一部を時効取得した場合でも、右土地部分の所有権取得につき登記がないときは、時効完成後旧所有者からこれを買い受けた第三者に対抗することができない。
  • 入会権確認等(最高裁判決  昭和57年01月22日)
    山林原野の管理利用について部落による共同体的統制が認められないとして右山林原野に対する住民の入会権が否定された事例
    山林原野が代議制をとつた村議会等の多数決による議決に基づいて村有財産として管理処分され、あるいは村当局の監督下において村民に利用されて来たなど、右山林原野の管理利用について部落による共同体的統制の存在を認めるに由ない判示の事実関係のもとにおいては、これに対する共有の性質を有する入会権及び共有の性質を有しない入会権は、ともに認められない。
  • 地上権存在確認、地上権設定登記手続、土地引渡(最高裁判決 昭和57年07月01日)民訴法第45条,民訴法第62条
    入会部落の構成員が有する使用収益権の確認又はこれに基づく妨害排除の請求と右構成員の当事者適格
    入会部落の構成員が有する使用収益権の確認又はこれに基づく妨害排除の請求については、右構成員各自に当事者適格がある。
    入会部落の構成員が有する使用収益権に基づく地上権設定仮登記抹消登記手続請求の可否
    入会部落の構成員は、自己の有する使用収益権を根拠としては入会地について経由された地上権設定仮登記の抹消登記手続を請求することができない。
  • 共有持分確認、損害賠償(最高裁判決  昭和58年02月08日)民訴法62条
    入会権の確認を求める訴えが原告側について通常訴訟と認められる場合
    入会団体に個別的に加入を認められたと主張する者が入会権者に対し入会権を有することの確認を請求する場合には、右主張者が各自単独で訴えを提起することができる。
  • 損害賠償請求事(最高裁判例  昭和63年01月18日) 民法第86条民法第242条
    共有の性質を有しない入会地上の天然の樹木の所有権が土地の所有者に属するとされた事例
    付近住民の採草放牧や薪炭材採取等に利用されていた入会地が、入会住民全員の同意のもとに、入会権を存続させ入会住民の保育した天然の樹木を売却する際にはその保育に対する報償として売却代金の一部を入会住民に交付することを条件として村に贈与され、右条件の趣旨に沿つて村が制定した条例に従つて、入会住民が造林組合を結成して組合名義で村に対し入会地の天然の樹木の伐採申請をし、これを受けた村が右樹木を売却してその代金の一部を組合に交付してきたなど判示の事実関係のもとにおいては、右入会地上に生育する天然の樹木は、共有の性質を有しない右入会地の所有者である村の所有に属する。
  • 所有権確認等(最高裁判決 平成6年05月31日)民法第33条,民訴法第45条,民訴法第46条,民訴法第58条
    総有権確認請求訴訟において入会団体が原告適格を有する場合
    入会権者である村落住民が入会団体を形成し、それが権利能力のない社団に当たる場合には、右入会団体は、構成員全員の総有に属する不動産についての総有権確認請求訴訟の原告適格を有する。
    権利能力のない社団である入会団体の代表者が総有権確認請求訴訟を原告の代表者として追行する場合における特別の授権の要否
    権利能力のない社団である入会団体の代表者が構成員全員の総有に属する不動産について総有権確認請求訴訟を原告の代表者として追行するには、右入会団体の規約等において右不動産を処分するのに必要とされる総会の議決等の手続による授権を要する。
    権利能力のない社団である入会団体の代表者でない構成員が総有不動産についての登記手続請求訴訟の原告適格を有する場合
    権利能力のない社団である入会団体において、規約等に定められた手続により、構成員全員の総有に属する不動産について代表者でない構成員甲を登記名義人とすることとされた場合には、甲は、右不動産についての登記手続請求訴訟の原告適格を有する。
  • 地位確認等請求事件(最高裁判決 平成18年03月17日)民法第2条,民法第92条,民法第294条,憲法第14条1項
    入会部落の慣習に基づく入会集団の会則のうち入会権者の資格要件を一家の代表者としての世帯主に限定する部分が公序良俗に反しないとされた事例
    A入会部落の慣習に基づく入会集団の会則のうち入会権者の資格要件を一家の代表者としての世帯主に限定する部分は,現在においても,公序良俗に反するものということはできない。
    入会部落の慣習に基づく入会集団の会則のうち入会権者の資格を原則として男子孫に限定し同入会部落の部落民以外の男性と婚姻した女子孫は離婚して旧姓に復しない限り入会権者の資格を認めないとする部分が民法第90条の規定により無効とされた事例
    A入会部落の慣習に基づく入会集団の会則のうち,入会権者の資格を原則として男子孫に限定し,同入会部落の部落民以外の男性と婚姻した女子孫は離婚して旧姓に復しない限り入会権者の資格を認めないとする部分は,遅くとも平成4年以降においては,性別のみによる不合理な差別として民法第90条の規定により無効である。
  • 入会権確認請求事件(最高裁判決 平成20年07月17日) 民訴法40条,民訴法第1編第3章 当事者
    入会集団の一部の構成員が訴えの提起に同調しない構成員を被告に加えて構成員全員が訴訟当事者となる形式で第三者に対する入会権確認の訴えを提起することの許否
    特定の土地が入会地であるのか第三者の所有地であるのかについて争いがあり,入会集団の一部の構成員が,当該第三者を被告として当該土地が入会地であることの確認を求めようとする場合において,訴えの提起に同調しない構成員がいるために構成員全員で訴えを提起することができないときは,上記一部の構成員は,訴えの提起に同調しない構成員も被告に加え,構成員全員が訴訟当事者となる形式で,構成員全員が当該土地について入会権を有することの確認を求める訴えを提起することが許され,当事者適格を否定されることはない。

英文出典等[編集]

(Rights of Common with Nature of Co-ownership)

Article 263 Rights of common that have the nature of co-ownership shall be governed by local custom and shall otherwise be subject to the application of the provisions of this Section.

前条:
民法第262条の3
(所在等不明共有者の持分の譲渡)
民法
第2編 物権

第3章 所有権

第3節 共有
次条:
民法第264条
(準共有)
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