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 平成13年版 犯罪白書 第1編/第2章/第3節/3 

3 精神障害のある犯罪者の特色 -殺人事件について-

 法務省刑事局の調査によれば,平成8年から12年までの5年間に,殺人事件(本項では,予備及び自殺関与を除く。)の刑事処分において,検察庁で精神障害のために心神喪失と認められた者及び心神耗弱と認められた者,並びに,第一審裁判所で心神喪失を理由に無罪となった者及び心神耗弱により刑を減軽された者は,合計702人(以下,本項ではこの702人を「対象者」という。)である。

(1) 前科・前歴及び入院歴

 I-29図は,対象者の前科・前歴の有無等の構成比を示したものである。

I-29図 前科・前歴の有無別構成比

 対象者のうち,前科・前歴を有する者は,108人である。そのうち,重大犯罪(本項では,殺人,放火,強盗,強姦・強制わいせつ,傷害致死,傷害及びその各未遂をいう。)の前科・前歴を有する者は46人である。
 I-30図は,対象者の犯行前の入院歴の有無等の構成比を示したものである。

I-30図 入院歴の有無別構成比

 対象者のうち,犯行前に入院歴を有する者は,342人であり,うち措置入院歴を有する者は54人である。

(2) 被害者との関係及び犯行時の治療状況

 I-31図[1]は,対象者による事件における被害者と対象者との関係を親族等,知人及び第三者の別に示したものであり,同[2]は,平成8年から12年までに検挙された全殺人事件における被害者と被疑者との関係を同様に示したものである。

I-31図 被疑者等と被害者の関係

 両者を比べると,被害件数中に第三者が占める割合は差異がないが,対象者による事件では,被害件数中に親族等が占める割合が高い。
 I-32図は,対象者の犯行時における治療状況を示したものである。

I-32図 犯行時の治療状況別構成比

 犯行時に治療を受けていた者が314人であり,そのうち入院中の者が37人,退院後通院中の者が171人,それ以外の通院中の者が106人である。犯行時に治療中でなかった者は,325人であり,そのうち,通退院又は無断離院後5年以内の者が120人,5年以内に治療歴がない者が205人である。
 I-23表は,対象者の精神障害名別とその人員数を示したものである。

I-23表 犯行時の精神障害名別人員

(3) 刑事処分後の状況

 I-33図は,対象者の刑事処分後の状況を示したものである。このうち,実刑・身柄拘束となった者は,89人であり,不起訴,執行猶予又は無罪となった者のうち,措置入院となった者が501人であり,その他の入院となった者(61人)や通院治療を受けた者(9人)を合わせると,571人が釈放後に治療を受けている。

I-33図 刑事処分後の状況別構成比