第二の心臓ともよばれる「ふくらはぎ」。ふくらはぎの筋肉が異常に収縮し痙攣すると、こむら返りになり、強い痛みが生じます。激しい運動だけでなく、血行不良や冷えの影響などで痛みが生じることもあります。幸福薬局の薬剤師、幸井俊高さんは、「漢方では、ふくらはぎの痛みやこむら返りを、血(けつ)・津液(しんえき)と深い関係にあると捉えています。したがって、漢方薬で血や津液の流れや量をととのえることにより、慢性的に繰り返すこむら返りやふくらはぎの痛みの治療を進めます」と話します。
「夜中にこむら返りに見舞われることがたびたびあります。筋肉がひきつり、涙が出るほどの激痛が走ります。膝にしびれや痛みもあります」
Aさんの膝のしびれや痛みは、長年の変形性膝関節症によるものです。手足の末端が冷えます。肩こりとも長い付き合いです。舌は淡紅色で、白い舌苔が付着しています。
ふくらはぎの腓腹筋などは、足の脛(すね)の後ろ側(下腿部後面)についている筋肉です。歩いたり走ったり運動するには、あるいは姿勢を保つには欠かせない筋肉です。ふくらはぎはまた、伸び縮みする際に血液を心臓に送り返す、いわばポンプの役割も果たしており、第二の心臓とも呼ばれています。
ふくらはぎには、激しい運動だけでなく、血行不良や冷えの影響などでも、痛みが生じます。とくに突然ふくらはぎの筋肉が異常に収縮し痙攣すると、こむら返りになり、強い痛みが生じます。
血行がわるくなると、足先やふくらはぎに栄養や酸素がじゅうぶん供給されなくなり、つりやすくなります。大量の発汗による脱水状態や、血液中の電解質(ミネラル)バランスの失調によっても、筋肉がつるリスクが高まるようです。中高年や、妊娠中の女性も、こむら返りを起こしやすいようです。
ふくらはぎの痛みやこむら返りは誰にでも生じることのある症状ですが、まれに病気と関係していることもあります。そのひとつは閉塞性動脈硬化症です。手足の動脈が動脈硬化によって硬く細くなり、狭くなったり詰まったりして血行がわるくなり、さまざまな症状を引き起こす疾患です。足のしびれや痛み、冷えが生じます。PAD(末梢動脈疾患)あるいは慢性動脈閉塞症とも呼ばれています。下肢静脈瘤や坐骨神経痛と関係している場合もあります。
ふくらはぎの痛みなどと関係が深いのは血・津液の「流れ」と「量」
ふくらはぎの痛みやこむら返りを、漢方では、気・血(けつ)・津液(しんえき)など人体の構成成分の「流れ」や「量」と深い関係にあると捉えています。気は生命エネルギーに近い概念、血は全身を滋養する血液や栄養、津液は体内の水液を指します。ふくらはぎの痛みやこむら返りと関係が深いのは、とくに血と津液です。
まず流れについては、中医学に「不通則痛(ふつうそくつう)」という言葉があります。「通じざれば、すなわち痛む」と読みます。体内での気・血・津液の流れがスムーズでないと痛みが生じる、という意味です。
量については、「不栄則痛(ふえいそくつう)」という原則もあります。「栄えざれば、すなわち痛む」と読みます。人体にとって必要な気・血・津液が不足すると痛みが生じる、という意味です。栄養や潤いがじゅうぶん供給されないと、その部分が正常に機能できず、痛みが生じます。
したがって、漢方では、血や津液の流れや量をととのえることにより、慢性的に繰り返すこむら返りやふくらはぎの痛みの治療を進めます。