2022年1月クールのドラマ『ミステリと言う勿れ』(フジテレビ系月曜夜9時~)が3月28日に最終回を迎える。第1話から2桁視聴率(世帯視聴率/ビデオリサーチ調べ)をキープし、3月15日までに見逃し配信再生数が民放テレビ番組初の3000万再生を突破した(3202万再生/ビデオリサーチ調べ)人気作だ。

菅田将暉さんが演じる主人公・久能整というキャラクターがどのように生まれたのか、ドラマに対してどのように感じたのか。1500万部を超えた原作を生み出した漫画家・田村由美さんにメールでインタビューさせていただいた。前編「『ミステリと言う勿れ』田村由美「菅田将暉さんが考え抜いて演じてくださる整を堪能しました」」では第1話を見た時の話から、整というキャラクターが出来上がった経緯を伺った。後編では、生身の俳優さんが演じたことで受けた変化や、これからのこともお聞きしていく。

(c)田村由美/小学館 (c)フジテレビジョン
 

生身の俳優さんが演じてくれる幸せ

――整くんは『名探偵コナン』の名探偵図鑑にも登場する「名探偵」です。田村先生が「ミステリ」を描くにあたり、苦労する点、気を付けている点はありますでしょうか。真相やトリックはどのように思いつくのでしょうか。

田村:整を探偵だと思ったことはないですが(青山先生ありがとうございます)、まずお話のイントロだけを思いつくことが多いです。その段階では事件かどうかわかりません。例えば、整が、大きな荷物を抱えて右往左往している人を見つけるとか、雨の中で記憶喪失の人に会うとか、病院の隣のベッドの人と夜通し話す、とか。そこから、これはどういうことなのか、奥に何があるのか、少しずつ掘って探っていきます。あまりトリックなどは考えないです。

事件解決のみを目的にするのではなく、整が何を見て何を考え話すのかが大事だと思っていますが、そこをシンクロさせるのが結構難しいです。毎回七転八倒しています。

雨の中で記憶喪失の男と出会う4巻より。ドラマでは柄本佑さんが演じた (c)田村由美/小学館

――『BASARA』しかり、ご自身の生み出したキャラクターを実在の方が演じるというのはどのようなものでしょうか。ご自身の内側にあったものが生きて話して動くというシチュエーションへの感想をお聞かせいただきたいです。

田村:昔はきっと抵抗があったのだと思います。アニメは似せてもらえることが可能でも実写は無理だろうと。でも、とある作品で実写化のお話をいただいたことがあって(それはなくなりましたが)、イメージの俳優さんが挙げられていたんです。その時、あ、意外にもこれはなんかすごく嬉しいことだなと思いました。

その後『BASARA』の舞台を上演していただく機会に恵まれまして、あまりの再現度に衝撃を受けました。「え、本人? 本人?」と(笑)。まだ2.5次元という言葉もなかった頃ですが、生身の俳優さんが演じてくださる楽しさにどっぷり浸かり、幸せを噛み締めたんです。だから今回ドラマ化が決まった際、菅田さんが「実写化に抵抗はないですか」と優しくきいてくださったんですが、「全然ないです」とお答えできました。全くない。楽しみだけでした。それは菅田さんが演じてくださるから。そしてやっぱり素晴らしかった。

田村由美さんの人気作の一つ、『BASARA』は2022年1月に舞台化された。揚羽役を『ミステリと言う勿れ』で犬堂甲矢を演じた久保田悠来さんが演じた (c)田村由美/小学館『BASARA』1巻より
『ミステリと言う勿れ』3話より。写真中央が舞台『BASARA』で揚羽を演じた久保田悠来さん (c)田村由美/小学館 (c)フジテレビジョン