世界的イベントを3月11日に控えた創価学会の「秘史」を明かそう

『人間革命』には書かれていない真実

日本を代表する巨大宗教団体、創価学会。絶大な影響力をもちながら、その歴史を詳しく知る人は意外にも少ない。

ジャーナリストの高橋篤史氏は、約1000ページもの未公開の機関紙・機関誌を入手し、創立80年を超える創価学会の知られざる歴史を炙り出した。その集大成『創価学会秘史』が、3月初旬の上梓以来、各界に静かな衝撃をもたらしている。

誰も知りえなかった、創価学会の真実とは? 特別寄稿をお届けする。

3・11に行われる「大規模集会」

創価学会は3月11日、「世界青年部総会」と銘打った大規模な集会を開催する。「広宣流布記念の日」と定める同月16日を前に、国内1200の会館と海外65カ国の拠点とを中継で結ぶという。世界規模で組織の一体感を高めようとの一大イベントである。

公称会員数が827万世帯に上る巨大宗教団体の創価学会を戦後引っ張ってきたのが、主に30代以下の男女で構成する青年部だ。その中核となる男子部の全国トップは最高幹部への登竜門となってきた。

前公明党委員長の太田昭宏衆議院議員や、次期会長の最有力候補と目される谷川佳樹主任副会長、それに菅義偉官房長官と太いパイプを持つことで知られる佐藤浩副会長ら、歴代の全国男子部長には錚々たる顔ぶれが並ぶ。

もっとも近年、創価学会の組織は急速に高齢化が進んでいる。

 

「折伏(しゃくぶく)」と呼ばれる勧誘活動はかつてのように進まず、組織を見渡せば親の代から学会員である2世・3世ばかり。そうした中には名簿の上だけ存在する者も少なくない。ある学会員によれば、「親に言われて入った2世・3世は活動が嫌で引っ越しても新しい住所を連絡しない人が多かったりする。私の地域では統監(=名簿)の3分の1が幽霊会員だった」ともされる。今や組織を支えているのはかつて若者だった団塊の世代というのが実情だ。

そうした中、あえて今回、世界規模の大会を開くのは何としてでも青年部組織を今一度盛り上げたいとの焦りからだろう。

今日、創価学会は頭打ち傾向の国内に見切りをつけ、海外組織の拡大に活路を見出そうとしている。

創価学会は昨年秋、「会憲」と名づけたいわば最高法規を制定した。創価学会インタナショナル(SGI)の旗の下に集う海外組織に対する統制を強めることが狙いとも見られている。その点でも、国内と海外とを同時中継でつなぐ今回の大会はまたとない演出の好機になると踏んだのだろう。

首相からの「メッセージ」が?

前述した広宣流布記念の日は60年前のある出来事にちなんだものだ。

1958年3月16日、当時、第2代会長の戸田城聖が率いていた創価学会は日蓮正宗の総本山、大石寺(静岡県富士宮市)に青年部メンバー6000人を結集し、後に「広宣流布の模擬試験」と呼ぶ大規模な集会を開いた。

1990年代に決別するまで創価学会は日蓮正宗の在家信徒団体だったが、その日、大会の会場とした大講堂は、資金力に物を言わせ始めていた学会が大石寺に寄進した最初の大型施設だった。

その集会にまつわるエピソードで有名なのは時の首相の出席を巡る一件である。当初、大会には戸田と親交を結んでいた首相の岸信介が出席する予定だった。

戸田率いる創価学会にしてみれば、宗門だけでなく世間に対し組織力を誇示するのにこれほどの賓客はない。が、岸は急を要する外交上の問題が生じたとして直前になり出席をキャンセル。かわりに岸の夫人を筆頭とする一行が出席した。一行の中には岸の婿養子で秘書官を務めていた安倍晋太郎の姿もあった。

このため、60年後の今月11日に開かれる世界青年部総会ではこんな憶測が囁かれている。岸の孫である安倍晋三首相からビデオメッセージが寄せられるのではないか、というものだ。60年ぶりに形を変えて戸田の願いが叶えられるという劇的な演出が加われば、間違いなく学会員は大喜びとなるのだろう。

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