2013 年 29 巻 6 号 p. 352-356
脚気心は現代では稀な疾患であるために,診断に難渋する場合がある.われわれは精神運動発達遅滞のある2歳女児が,感冒を契機に両心不全・肺高血圧を呈して発症した脚気心の小児例を経験したので報告する.1歳頃より白米や乳性飲料といった白いものしか食べない偏食が続き,入院中にビタミンB1の著しい低下が確認された.肺高血圧を来す心疾患・肺疾患・膠原病は認めず,ビタミンB1の補給にて心機能は改善し肺血圧は正常化した.同時に認められていた神経学的症状(筋緊張低下・深部腱反射消失・活気低下)も改善傾向を示した.本症例はビタミンB1欠乏による脚気心と二次性肺高血圧症と診断され,栄養状態の改善とともに治癒に至った.