音声言語医学
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聴覚情報処理障害 (APD) について
福島 邦博川崎 聡大
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2008 年 49 巻 1 号 p. 1-6

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抄録

聴覚情報処理障害 (Auditory Processing Disorder: APD) とは, 末梢聴力には明白な難聴を呈さないが, 中枢性聴覚情報処理の困難さによって難聴に似た症状を呈する状態である.しかし, APDの疾患概念は比較的新しく, 臨床場面での具体的な診断および介入方法には若干の混乱も見受けられる.本稿では, 自験例のAPD症例について報告し, この疾患の診断を中心に概念と介入方法についても概説する.提示した症例は, 初診時11歳8ヵ月の女児で, 騒音下で会話が聴き取れないことを主訴とし本院来院となった.画像所見では, 両側側頭葉後部内側の局所脳血流量の低下を認め, DLTでは単音節, 単語とも正答率の有意な低下と顕著なREA傾向を認めた.CSTではS/N 0 dBで受聴困難であった.APDの診断のために, 他疾患の除外診断と画像診断, 聴覚的検査を併用することが必須であるが, 日本語の特性に根差した診断および介入方法を確立するためには, 今後の研究の進展が望まれる.

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© 日本音声言語医学会
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