本研究の目的は,近代日本の地域社会で生じたキリスト教集団をめぐる排除の事例を検証し,一連の事件を通して排除を正当化する「排除の景観」の性質を明らかにすることである.本研究では,1933年の美濃ミッション事件と,1930年代半ばの奄美大島のカトリック排撃の2つの事件を事例とし,これらの事件において排除する側と排除される側双方の言説を検証した.その結果,次のことが明らかになった.
1. 美濃ミッション事件では,排除に関わる言説はナショナル,ローカルのほかにグローバルなスケールが確認された.2. 奄美大島のカトリック排撃事件では,排除の言説および実践はナショナルとローカルの二重の文脈を持っていた.3. 二つの事件では,キリスト教集団の施設に様々な言説が付与され,排除を正当化する物語が込められた「排除の景観」が形成された.