Trends in Glycoscience and Glycotechnology
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ポリシアル酸の新機能と統合失調症
Chihiro SatoKen Kitajima
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2011 年 23 巻 133 号 p. 221-238

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抄録

シアル酸 (Sia) がα2, 8結合で8-400残基縮重合したポリシアル酸構造は、胎仔期の脳において神経細胞接着分子 (NCAM) 上に一過的に発現する。また成体脳では、海馬や嗅球などの神経の再構築が行われている部位で発現が存続している。ポリシアル酸は、自身の大きな負電荷や立体障害により、細胞の接着を阻害するため、細胞接着の負の制御分子として細胞移動や神経突起の伸長、軸索の可塑性を促進し、正常な神経回路の形成や神経発生に関わるとされてきた。近年我々はポリシアル酸が神経の機能を制御するBDNF、FGF2、ドーパミンのような生理活性因子と直接相互作用し、それらの因子を保持して細胞表面濃度を調節することによって細胞機能を制御する新たなポリシアル酸の機能を見いだした。また、ポリシアル酸構造の生合成を司るポリシアル酸転移酵素(STX)について、統合失調症患者に報告されたその翻訳領域におけるSNPは、酵素活性を顕著に低下させ、それを反映するポリシアル酸構造の質と量を低下させ、そのことによりポリシアル酸の保持機能が失われることを明らかにした。このポリシアル酸構造の破綻が統合失調症をはじめとするポリシアル酸量の変動が認められる精神疾患や神経変性疾患患者のポリシアル酸による分子保持機能に影響を与えている可能性がある。

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© 2011 FCCA(Forum: Carbohydrates Coming of Age)
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