2003 年 11 巻 2 号 p. 39-43
森林型の分類と分布に関しては,これまで主として気候条件と優占種の生理生態的特性のみから議論されてきた。しかし,近年森林動態や更新,長期の植生変化に関する研究が進み,気候条件と関連性を持った動物と植物の相互作用や人間由来を含む撹乱などが重要であるとする指摘がなされている。日本の冷温帯落葉広葉樹林については,ブナの優占する森林帯が代表的とされてきたが,近年の研究を総合すると,ブナが優占する森林はもっとも湿潤(かつ多雪)な気候に特異的に現れるものであり,Quercus属などを主体とした混交林が冷温帯では卓越していたと考えられる。中間温帯林として議論されてきた森林型もこれに含まれ,冬季の乾燥した気候,それに伴う山火事,あるいは人間活動などの影響を強く受けたものである。