日本植物病理学会報
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ワサビうどんこ病(新称)
奥 尚有江 麻美岸良 日出男
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1993 年 59 巻 5 号 p. 601-606

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抄録

1990年より埼玉県戸田市において温室栽培のワサピ(Eatrema wasabi Maxim.)品種‘真妻’に未記載のうどんこ病の発生を認めた。菌糸は葉の表裏面全体に薄く発達し,分生子の形成は比較的少なかった。分生子はフィプロシン体を欠き長楕円形, 32.0~51.6×13.6~23.2μm(平均39.8×17.1μm)で,表生菌糸より直立に生ずる分生子柄に単生した。分生子発芽管および付着器の形態は平田(1942, 1955)によるErysiphe Polygoni型であった。子のう殻の形成は認められなかった。接種試験では,アブラナ科植物のみに病原性を認めた。従来,アブラナ科植物のうどんこ病菌は, E. PolygoniまたはE. communisと呼ばれたが, Junell (1967)は,これら集合種のうちアブラナ科に寄生するものをE. cruciferantmとし,現在,世界的に認められている。以上より,本菌をErysiphe cruciferarum Opiz exjunellの不完全世代(Oidium sp.)と同定し,病名をワサビうどんこ病(powdery mildew)と呼称することを提案する。

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