日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
天然抗酸化物質に関する研究
(第1報)フラボノイドの抗酸化力の比較とトコフェロール及びメラノイジンとの相乗性
山口 直彦
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1975 年 22 巻 6 号 p. 270-274

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抄録

12種のフラボノイドの抗酸化力の比較及びメラノイジン,トコフェロール及びクエン酸に対する相乗性を試験した結果は次のとおりである。
(1) フラボノイドの抗酸化力はゴッシペチン及びフェルバセチンに顕著に認められた。ケルセチン,タキシホリン,ルテオリン及び4種のカテキン類なども抗酸化力を示したが,前記した2種のフラボノイドに比較して著しく弱い。
(2) フラボノイドとメラノイジンとの相乗性はゴッシペチン,フェルバセチン,ケルセチン,ケムフェロール,ルテオニン及びカテキン類との間に認められた。またフラボノイドとトコフェロールとはゴッシペチン,フェルバセチン及びカテキン類と相乗性を示した。さらに,クエン酸とゴッシペチン,フェルバセチン,ケルセチン,タキシホリン及びカテキン類との間にも相乗性が認められた。
(3) ゴッシペチン,メラノイジン及びトコフェロールの3者による2者ずつ併用区の相乗性の試験では,ゴッシペチン+トコフェロール区<トコフェロール+メラノイジン区<ゴッシペチン+メラノイジン区の順に相乗性は大となった。3者併用区はさらに,ゴッシペチン+メラノイジン区よりも3倍の誘導期間の延長を示した。
(4) フラボノイドのDPPHに対する単位還元力当りでの抗酸化力を測定した結果,フラボノイドの還元力のみによって,その抗酸化力を説明できなかった。
(5) ケルセチン及びメラノイジンのプレカーサーであるキシローズ添加ビスケットを試作し,ビスケット中のラードの酸化安定性を測定した結果,ケルセチン及びキシローズ併用区の安定性は著しく向上した。
(6) フラボノイドの構造を1個所変えることによって生じる抗酸化力の最も大きな変化は8位のOHであり誘導期間にして24~28日の差であったが,他の位置の変化では5日程度の誘導期間の変化にすぎなかった。

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