2013 年 28 巻 2 号 p. 178-184
膵頭部癌の膵頭十二指腸切除術後消化吸収障害に対する,腸溶性高力価膵消化酵素剤パンクレリパーゼの有効性を,従来の膵消化酵素剤から本剤に切り替えた7症例で評価した.消化吸収障害は下痢の程度,体重の増減,日常生活の活動性,消化不良の症状を織り交ぜWong-Bakerのフェイススケールにあわせて,0から5までのGrade分類を新たに作成して評価した.1例で重度の下痢がみられ投与中止した.他の6例では腸溶性パンクレリパーゼへの変更によって,5例で体重増加がみられ,4例で止痢剤減量を要した.消化吸収障害Gradeは,体重増加のなかった症例,止痢剤減量ができなかった症例も含め6例全例で0または1にまで改善していた.膵頭部癌術後の消化吸収障害の改善に,腸溶性パンクレリパーゼの投与は,有用であることが示唆された.また,今回考案した臨床に即したGrade分類は,消化吸収障害の評価に有用であった.