山口医学
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原著
タンパク異化指標としての血中3-メチルヒスチジン;基準値および重度侵襲患者値の推移
山下 進
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2007 年 56 巻 6 号 p. 193-200

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抄録

【背景】尿中の3-メチルヒスチジン(3-methyl histidine, 3-MH)は筋タンパク異化の程度を反映する指標とされている.近年ではより短時間のタンパク代謝を評価する方法として,血中の3-MHが用いられることがある.しかし,これまでにヒトでの測定報告は少なく,その基準値は決められていない.【目的】健常成人における血中3-MHの基準値(範囲)を求め,重度侵襲患者の血中3-MHと比較する.そして侵襲時,タンパク異化の指標と成り得るかを検討する.【方法】健常成人101名の血中3-MHを高速液体クロマトグラフで測定した.重度侵襲患者6名の血中3-MHを経日的に測定し,基準値と比較した.また,血中アルブミン,急性相タンパクおよび尿中3-MHを経日的に測定し,タンパク代謝を評価した.【結果】健常成人の血中3-MHの基準範囲は0.91~5.59 nmol⁄mlとなった.男性では1.22~6.26 nmol⁄ml,女性では1.09~4.41 nmol⁄mlであり,男性が有意に高値を示した(p<0.05).筋肉量による補正のために3-MH⁄血中クレアチニン値(3-MH⁄Cre)を算出すると,男女差がなくなり,健常成人全体では0.13~0.53 nmol⁄μg Creが基準範囲となった.重度侵襲患者では健常成人に比して血中3-MH⁄Cre値は有意に高値であり(0.59±0.12 vs 0.33±0.10 nmol⁄μg Cre, p<0.05),筋タンパクの異化亢進が示唆された.重度侵襲患者の血液では3-MH⁄Creとアルブミン,急性相タンパクにそれぞれ相関を認めなかった.【結論】健常成人の血中3-MH⁄Creの基準値を設定した.筋肉量の差があるために男女別の基準値か,クレアチニン値で補正した値を用いる必要がある.重度侵襲患者では明らかに血中3-MH⁄Creは上昇し,タンパク異化亢進が強く示唆された.

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© 2007 山口大学医学会
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