ウイルス
Online ISSN : 1884-3433
Print ISSN : 0042-6857
ISSN-L : 0042-6857
植物ウイルスの虫媒伝染機作に関する研究 (第6報)
放射性同位元素P32による萎縮病稲およびツマグロヨコバイの燐酸代謝の観察
吉井 啓木曽 皓山口 敏春宮内 修三
著者情報
ジャーナル フリー

1959 年 9 巻 5 号 p. 453-462

詳細
抄録

(1) 萎縮病感染稲及び保毒媒介虫ツマグロヨコバイは燐酸代謝に異常を表わす. 本報告はこの異常現象に検討を加えるために, P32を利用して観察した結果の一部を取纒めたものである.
(2) 稲, ツマグロヨコバイ共に燐酸各劃分に於けるP32のturnover rateは, 罹病や保毒により低下する.
(3) RNAに於けるP32のincorporationは, 稲, 媒介虫共にウイルスの影響をうけても, autoradiogramでのspotは数, 位置には差異がみられない. 尤もこのspotには紫外線吸収は認め難い. しかしてradioactivityは稲では罹患しても変化は少いが, 媒介虫では保毒により一般に強くなる.
DNAでのP32のincorporationは, 稲, 媒介虫共に感染や保毒によつてもautoradiogramのspotには差異はない. 尚このspotには紫外線の吸収が認められる. しかしてこのradioactivityは感染保毒に伴つて著しく増強される.
(4) 稲及びツマグロヨコバイの酸溶性燐酸化合物は, LePage & Umbreit法によつて分劃観察した. Ba可溶及びBa不溶劃分は, 稲・媒介虫共に, ウイルスの影響によつてもP32のincorporationに著しい差異はみられない. 又P32のBaアルコール可溶分劃へのincorporationは, 稲・媒介虫共に極めて微量であり健病間に差異はない.

著者関連情報
© 日本ウイルス学会
次の記事
feedback
Top