ウイルス
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総説
巨大ウイルスの細胞侵入・増殖機構
武村 政春
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2016 年 66 巻 2 号 p. 135-146

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抄録

 ミミウイルスは,その粒子径やゲノムサイズが巨大なだけでなく,複数の翻訳関連遺伝子が発見されたこと,細菌がもつファージ耐性機構であるCRISPER Cas システムと同様のシステムをヴァイロファージ耐性機構として保有することで注目された.ミミウイルスは,ファゴサイトーシスによりアカントアメーバ細胞内に侵入すると,スターゲート構造を開け,ゲノムDNA をアカントアメーバ細胞質中に放出し,巨大なウイルス工場を形成する.ウイルス工場ではミミウイルスDNA が複製され,その周辺部に集積したカプシドタンパク質,小胞体に由来する脂質二重膜成分をウイルス粒子として取り込みながら,大量に増殖する.マルセイユウイルスは巨大ウイルスの中では小型で,ファゴサイトーシスあるいはエンドサイトーシスによってアカントアメーバ細胞内に入ると,ミミウイルスよりも大きなウイルス工場をアカントアメーバ細胞質に形成し,大量に増殖する.飛びぬけて大きな粒子径,ゲノムサイズを持つパンドラウイルスは,ファゴサイトーシスによりアカントアメーバ細胞内に侵入し,ゲノムDNA を開口部を通じてアカントアメーバ細胞質中に放出する.そして細胞核を壊し,核膜成分を自身の脂質二重膜として取り込みながら,細胞核の“跡地”周辺で増殖する.

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© 2016 日本ウイルス学会
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