わが国の鉄道は,政府の近代化政策のトップ・ランナーとして明治5 年(1872)10 月に新橋・横浜間で開業したのが始まりである.わが国の鉄道建設は,殖産興業を急ぐため同時並行的に鉄道網を整備する必要があったことから請負契約を多く採用してきた.わが国の請負契約と積算は,紛れもなく鉄道工事が先駆けとなって発展してきた.この史実に基づき,本論文は鉄道工事における請負契約と積算の歴史的変遷を明らかにすることを試みた.
その結果,a) 個別の工事の都度請負契約書と仕様書が定められた“創成期”,b) 請負契約書と仕様書の書式が統一化され発展した“成長期”,c) 組織的に予定価格の体系,積算の方法,歩掛等が標準化された“成熟期”の3 区分に大別できることを明らかにした.