日本内科学会雑誌
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医学と医療の最前線
E型肝炎の現況
岡本 宏明
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2006 年 95 巻 5 号 p. 945-951

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抄録

輸入感染症の一つで稀な疾患と見なされていたE型肝炎が, 実は人獣共通感染症として国内でも看過できない頻度で発生していることが明らかになった. したがって, E型肝炎は急性肝炎の診断に際し, 常に念頭に置かれるべき疾患の一つであると言える. その特徴として, 1) 中高年の男性に多く, 2) 全国に遍在するが, 北海道で最も多く (全体の約40%), 次いで, 東北・関東地方に多いこと, 3) 大多数は比較的短期間のうちに軽快治癒するが, 劇症肝炎による死亡例や, 黄疸遷延や血液凝固能異常 (プロトロンビン活性 : 40%以下) を示す重症化例が少なからず認められること, などが挙げられる. ブタやイノシシなどの動物の肉や内臓を生, ないし生に近い状態で摂食したあとのE型肝炎発症例が最も多く, 稀ながら輸血感染も確認されているが, 今尚約半数の患者で感染源や感染経路が不明である. 改正感染症法において4類感染症に分類され, 届け出が義務付けられている.

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© 2006 一般社団法人 日本内科学会
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