日本内科学会雑誌
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ミオグロビン尿症による急性腎不全を呈したalcoholic myopathyの1症例
藤江 正雄古谷 雅子柳沢 英雄北條 義道江原 弘菅野 仁平石橋 浩明
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1985 年 74 巻 6 号 p. 786-789

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抄録

症例は42才,大酒家の男性である.アルコール多飲後,両下肢の腫脹・疼痛および無尿を主訴に発症し,翌日当院に入院した.入院時,両下肢に強い腫脹を認め,圧痕はなかつた.下肢の動脈は左右差なくよく触知でき,静脈の怒張圧痛もなかつた.神経学的には,下肢の筋力低下および腱反射低下を認めた.尿は赤褐色で,潜血3(+)にもかかわらず,沈渣に赤血球を認めなかつた.生化学的検査ではGOT 606IU/l, GPT 289IU/l, LDH1279IU/l, CPK 2269mU/ml, aldolase 120.5mU/mlと上昇し,尿中・血中のミオグロビンはともに500ng/m1以上と著増していた.また,高窒素血症,高カリウム血症もみられた.著しく上昇していたCPKは入院後比較的速やかに減少したが,無尿は各種利尿薬に反応せず,高窒素血症が続くため,血液透析を施行し,急性腎不全を脱した.第6病日に大腿四頭筋生検を施行したが,光顕・電顕ともに軽度の非特異的変化をみるのみであつた.ミオグロビン尿症は急激な骨格筋壊死により招来される病態であり,その原因は種々あげられるが, 1955年Hedらは,アルコールでも急性のミオグロビン尿症がおきることを報告した.以来,欧米での報告は多いが,本邦においては少なく,我々の知る限り重症な腎不全に至つた例はない.本症でしばしば問題にされる低カリウム血症は,本症例では認めず,むしろ腎不全による高カリウム血症がみられた.

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