日本内科学会雑誌
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心拡大,高度浮腫を伴つた急性多発性神経炎(続報)その疫学ならびに成因としてのビタミンB1欠乏症
高橋 和郎北川 達也
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1976 年 65 巻 3 号 p. 256-262

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抄録

最近多発した浮腫を伴う急性多発性神経炎25例につき,発生頻度ならびに成因について検討した.年次別にみると昭和48年以後年ごとに多発する傾向があり,春から初秋にかけて発症することが多く,とくに若年男性に多い.食事は全例白米食で,強化米はなく,インスタント食品の多食,高糖質,低VB1の清凉飲料水の多飲が目立つた.又発症時激しい運動をしているものが多かつた.詳細に検討した2症例において血中B1濃度はやや低値,乳酸,ピルビン酸濃度はやや高値,平日ならびにB1負荷時の尿中B1排泄量は明らかな低値を示した.さらにB1投与が特異的に症状改善をもたらす所などから,本症が脚気neuropathyであることを明らかにした.末梢神経は軸索変性を示し,とくに初期には特異な管状構造物が軸索内に多数出現した.有髄線維に比し,無髄線維の変化は軽度であつた.最近脚気が増加し始めたことは,本邦栄養食品に何らかの欠陥が生じ始めたことを示すものである.

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