分析化学
Print ISSN : 0525-1931
シアノコバラミン製剤の原子吸光分析法による定量条件の検討
原子吸光分析法による微量医薬品の定量(第1報)
喜谷 喜徳竹田 勝彦小池 久
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1973 年 22 巻 6 号 p. 719-723

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抄録

原子吸光分析法による微量医薬品の迅速定量法の開発を試みた.シアノコバラミン(CyCo)はコバルトを含有する金属キレート化合物である.したがってB12の定量は原子吸光分析法により,コバルト量を測定すると定量できる.本実験には日立207型原子吸光分光光度計を用い,予混合式バーナー,空気-アセチレン燃料,中空陰極ランプを用いて測定を行なった.本報告では測定条件の検討を行なった.比較のためα-グリシンコバルト錯体,酢酸コバルトを同時に測定し,CyCo製剤の測定条件を検討した.
水溶液の測定条件は,波長2407Å,ランプ電流値10mA,スリット幅0.18mm,流量は空気13.0l/min,アセチレンは3.0l/minである.水溶液の測定では,回収率は低いが,0.1N塩酸酸性溶液で行なうと,100%近い回収率を与えた.CyCoおよび錠剤,注射薬は0.1N塩酸溶液で測定するときわめてよい結果を与える.20%エタノール溶液ではヒドロキソコバラミンは期待どおりの結果を与えるが,CyCoは低い回収率を与える.100%エタノール溶液および0.1N塩酸エタノール溶液では,いずれもよい結果を与えた.錠剤における乳糖などの賦形薬,注射薬における生理的食塩水の影響はない.したがってCyCo製剤は水に可溶であっても0.1N塩酸酸性溶液で測定する必要がある.CyCoはかなり安定な化合物であるが,コバルトイオン共存の場合には,吸光光度法の併用が望ましい.著者らはこの分離定量法を検討中である.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry
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